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これで「特定秘密保護法」って…公文書を破棄しまくってきた日本政府

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『国家と秘密 隠される公文書』(久保亨、瀬畑源/集英社新書)

 12月に施行される特定秘密保護法について、「国民の知る権利が犯される」と危機感が強まっているが、もしかしたら、問題はそれ以前のところにあるのかもしれない。

「『知る権利が犯される』という声には、(中略)しばしある種の違和感を覚えざるを得ません」「犯されるというに足りるほどの知る権利を、戦後日本の国民は、持っていたのでしょうか?」

 こんな皮肉を放つのは、『国家と秘密 隠される公文書』(久保亨、瀬畑源/集英社新書)。同書は、いかにして国家が公文書を意図的に隠蔽してきたかを明らかにした一冊だが、それ以前に、ろくに文書管理なんて出来やしなかった、いい加減な管理の歴史をも暴き出している。

 70年代、大蔵省(現・財務省)には文書目録さえなく、「主計局では机の上が予算査定を受ける他省庁の資料でみるみる山になる。いつも捨てることばかり考えていた」(柿澤弘治衆議院議員/当時は大蔵省勤務)そうで、「現役の官僚の時、文書が多すぎて『秘印』もいちいち気にとめなかった」と言う。教科書からテスト用紙から通信簿から賞状まで入り乱れている少年の汚部屋と変わらないレベルだったのである。

 そのずさんな管理は、時として人すら殺めてきた。1956年に発見された水俣病では、発見から遡ること4年前の52年に、熊本県水産課の担当者がチッソの廃水を調査した報告書に水質汚染の危険性を指摘しており、「公文書管理の原則に基づき公開されていたならば、水俣病の甚大な被害はくいとめられていた可能性が高かった」とする。

 80年代に血友病患者の治療に非加熱製剤が使用され、HIV感染者・エイズ患者を生み出した事件では、民事裁判の過程になって、ようやく厚生省の倉庫から関連文書ファイルが大量に出てきた。文章が整理されてさえいれば、裁判は長期化することはなかった。

 ようやく情報公開法が施行されたのが2001年、特定非営利法人情報公開クリアリングハウスが情報公開請求で得た数値を基に、施行前後の文書廃棄量を図表化しているのだが、衝撃の数値が出ている。法律が施行される直前の00年度に、突如、文書廃棄量が増えるのだ。

 農林水産省は1999年度・11トンから2000年度・233トンへ、警察庁は111トンから200トンへ、財務省は269トンから619トンへ、法務省は88トンから156トンへとそれぞれ数倍に膨れ上がっている。施行後の01年度はおおよそ99年度の水準に戻っているから、情報公開請求されては困るものを一斉に破棄したと考えるのが自然だ。部屋のお片づけが出来ない少年は、大掃除の時期に、どさくさに紛れて都合の悪いテスト用紙を丸ごと捨ててしまった、というわけ。こんな状態なのに「これからはオレの部屋に勝手に入ってくんな」というのである。

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