原発事故は決して終わってはいない(画像は朝日新聞デジタル「特集・連載:吉田調書」より)
「われわれのイメージは東日本壊滅。本当に死んだと思った」
福島原発事故発生から4日後の3月14日夜、2号機の原子炉水位が低下した危機的な状況で、当時の福島原発第一・吉田昌郎所長がその事態を振り返り語った一言だ。あれから3年半の歳月が流れたが、原発事故は決して終わってはいない。それどころかもっと恐ろしい事態が進行している。
それはズバリ、住民の健康被害だ。まず、チェルノブイリでも激増した甲状腺がんが福島でも急増しているのだ。すでに福島県の調査で、甲状腺がんと確定した子どもは57人、「がんの疑い」とされたのは46人に上ることがわかっている。
福島県はこの異常に高い数字にも関わらず「検査範囲を広げたことによるスクリーニング効果」「症状も年齢分布もチェルノブイリとは異なる」という理由で「原発の影響は考えにくい」と結論づけている。だが、一方で、がんと診断された子どもの地域が非常に偏っていることから、この判断に疑義をはさむ専門家もいる。
疑われているのは甲状腺がんだけではない。「宝島」(10月号)では「福島県で急増する『死の病』の正体を追う!」と題して、セシウム汚染とある病気との因果関係のレポートを掲載している。
「実は、原発事故の発生を境に、福島県内で多発・急増している病気がある。厚生省労働局の『人口動態統計』データを精査した結果、その事実が明らかになった」
その病気とは急性心筋梗塞。死にいたる危険性の非常に高い病気である。記事では、震災発生前後の福島県における住民の死因を公開している。それによると、11年は地震や津波による「不慮の事故」が増加しているが、12年になると循環器系疾患の代表格である「急性心筋梗塞」がトップに躍り出ているのだ。全国規模で見た場合、心筋梗塞の死者数は年々減少する傾向にあり、そのことによって日本人男性の平均寿命が伸びているのだが、しかし福島県は違っていた。
「なぜか福島県では急性心筋梗塞が急増し続けている。異常事態以外の何ものでもない」
記事ではそれが原発と因果関係があるのかどうかを、慎重に分析していく。セシウム137の土壌汚染の濃淡と、急性心筋梗塞の死亡率、そして事故以前のそれとを比較した結果、以下のようなものだった。
「セシウム汚染が濃いところほど、急性心筋梗塞の年齢調整死亡率が高いという傾向が見られたのである」
例えば事故以前、もともと急性心筋梗塞での死亡率が高かったという石川町、相馬市だが、さらにセシウム汚染が加わった12年には、急性心筋梗塞の死亡率がさらに上昇している。またもともと死亡率の低かった地域でも、強いセシウム汚染に晒された天栄村や桑折町では、急性心筋梗塞の死亡率が上昇しているのだ。