自衛隊リクルートのこうした露骨な貧困層狙いの背景にあるのは、もちろん応募者の激減だ。
2012年度には11万4250人いた自衛官の応募者数は、2024年度には6万1742人と、ほぼ半減(2025年度は6万5359人と少し増えたがほぼ横ばい)。中途退職者も、長く増加傾向にある。2021年度5742人、2022年度6174人、2023年度には過去最多の6258人、2024年度は少し減ったが5620人と、依然高い水準が続いている。
原因のひとつが少子高齢化にあることはもちろんだが、18歳人口の減少率をはるかに上回っている。
応募者数の推移を見ると、2014〜15年度に大きく減っており、この時期は安倍政権が集団的自衛権を容認し、安保法制が強行成立させた時期と重なっているのだ。そして、前述した全国の高校生への“赤紙”配布など、自衛隊が勧誘の手法をエスカレートさせたのも同じく2014年頃だった。
ようするに、自民党政権の「戦争のできる国づくり」「国民が血を流す安全保障」への転換によって、志願者がさらに減り、日本の自衛隊は貧困層を狙い撃ちせざるをえなくなったのである。
そう考えると、今回、小泉防衛相を筆頭に、自民党の右派政治家、右派メディアがこぞって、立憲・古賀議員にヒステリックに噛み付いているのは、むしろ、その質問がいまの自衛隊の本質を抉り出すものだったからではなか。
それは、「自衛隊は経済的に厳しい子が行く」という発言だけではない。古賀議員が続いて口にした「豊かな子どもたちは自衛隊とかなりませんよ」という発言もそうだ。
この発言はキリトリでは「とか」が「なんか」にすり替えられ、より激しい批判にさらされているが、決して間違いとはいえない。富裕層の子供が末端の自衛隊員になるケースが極端に少ないことは、小泉防衛相の16日の閣議後会見での発言が物語っている。
この時、小泉氏は古賀発言を改めて「一方的な偏見」としたうえ、6月にインドネシアを訪れた際に自分の通訳を務めた防衛駐在官が父親もインドネシアの防衛駐在官だったというエピソードを披露して「親の姿を見たり、国家への貢献を考えたり、公共への思い、社会への思い、そういった志を持った」自衛官がいると反論していたが、防衛駐在官というのはそもそも、防衛省から外務省に出向した、エリート中のエリートの幹部自衛官だ。
自衛隊員の情報を全て把握できるはずの防衛大臣ですら、経済的理由と関係なく自衛官になったケースとして、幹部自衛官、しかも外務省に出向しているような、特別な例しか出せないのである。
いや、幹部自衛官でさえ、支配層・富裕層出身は多くはないはずだ。
今回の問題をめぐって、元大阪府知事の橋下徹氏がXで〈自衛隊に失礼だ! と叫ぶ国会議員たちは、ほんと形而上的思考〉と投稿したのに続いて、〈だいたい自衛隊員の子供を持つ国会議員って何人いるんだ? 多くの国会議員たちは、子供の学歴アップに必死やろ〉とポストしていたが、国会議員だけをとっても、子どもが自衛隊員になったというケースは、小沢一郎・前衆院議員と自衛隊出身の佐藤正久・前参院議員くらいしか、聞いたことがない。
ようするに、「日本人も血を流せ!」と叫んでいる自民党の右派政治家たちには、自分の身内や支持者である富裕層を自衛隊に送り込む気なんてさらさらなく、「血を流す」役割は、「金と仕事に困り、教育を受ける権利を奪われた貧乏人」に押しつければいいと考えている。
そのグロテスクな本音を誤魔化すために、連中は自衛隊員を「自衛隊員は国を守る崇高な任務についている」などと持ち上げ、今回の古賀議員の発言を「職業差別だ」「自衛隊員に対する侮辱だ」とヒステリックに攻撃しているのだ。