まず、告発文書が指摘する「信用金庫への県補助金の増額」だが、この増額はたしかに優勝パレードと同時期におこなわれていた。
兵庫県では、金融機関が新型コロナ対策の無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)で融資先へ支援をおこなった場合、1件あたり最高10万円を金融機関に対して県が補助する「中小企業経営改善・成長力強化支援事業」を実施。2022年の補正予算では補助金として8億円が計上され、2023年は県の産業労働部が約1億円の予算を要求。11月14日の財政課長の査定資料には1億円と記されていたという(「サンテレビNEWS」2024年8月6日付)。
だが、この約1億円という数字に対し、片山副知事が「これじゃ足りん。4億にせえ」と言い始め、担当課は要求額を3億7500万円に引き上げたという(「集英社オンライン」2024年10月30日付)。実際、11月16日の産業労働部の事業説明書でも、金額が3億7500万円に差し替わっている。
さらに、この補助金を積み増ししたのが斎藤知事だ。職員のメモによると、優勝パレード2日前にあたる11月21日の知事査定において、斎藤知事は「全体をまるく4億円程度で」計上することを指示。その結果、現場が約1億円で要求していた金融機関への補助金の財源は、4億円にまで増額されたのだ。
かたや、県は優勝パレードの協賛金集めに難航していたが、補助金の増額が決まって以降、優勝パレード終了後だったにもかかわらず協賛企業を得ていた。パレード終了後に協賛を申し込んでも企業PRにはならないというのに、優勝パレード後に協賛を申し込んだうち11件が、なんと告発文書で指摘されていた信用金庫だったのである。
しかも、斎藤知事が「全体をまるく4億円で」とさらなる増額を決めたのと同じ11月21日、片山副知事は告発文書で「幹事社」として名指しされていた但陽信用金庫の桑田純一郎理事長に“協賛金の集まりが悪いので県内11の信用金庫から拠出してほしい”と依頼していたことも判明している。
この問題について、片山氏は百条委で「信用金庫に対する協賛金の協力依頼と補助金を増額する予算措置のタイミングがたまたま一致した」と述べたが、「たまたま一致した」と言うには、タイミング的にあまりにも出来すぎた符合だと言わざるを得ない。だいたい、片山氏は当初案で1億円だったのを4億円に増額させたことについて、「これは国の財源から4億円を確保できるメドが立ち、それなら増額したほうが県内の中小企業のためになると考えたためです」(「現代ビジネス」内「週刊現代」記事2024年11月8日付)と述べているが、昨年10月24日の百条委においては〈補助金を1億円から4億円に積み上げる作業に関わった県職員が、増額する根拠は「なかった」との趣旨の証言をした〉と県関係者が語っているというのだ(前述・集英社オンライン)。