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森喜朗、安倍晋三、菅義偉は東京五輪不正にどう関わっていたのか? “キーマン”高橋治之が保釈後初インタビューで証言

 今回の高橋インタビューではもうひとつ、大きな疑惑への裏付けもとれた。

 それは、五輪招致でIOC委員買収の費用として、セガサミーホールディングスの里見治会長が、森元会長が代表理事を務めていた一般財団法人「嘉納治五郎記念国際スポーツ研究・交流センター」に5億円を振り込んだとされる疑惑だ。

 この疑惑は、「週刊新潮」(新潮社)2020年2月20日号が報じたもので、記事によると、五輪の東京開催が決まった2013年秋ごろ、セガサミーの里見会長が東京・新橋の高級料亭で開いた会合で、テレビ局や広告代理店の幹部を前に「東京オリンピックは俺のおかげで獲れたんだ」と豪語し、こんな話をはじめたというのだ。

「菅義偉官房長官から話があって、『アフリカ人を買収しなくてはいけない。4億~5億円の工作資金が必要だ。何とか用意してくれないか。これだけのお金が用意できるのは会長しかいない』と頼まれた」

 このとき、里見会長は「そんな大きな額の裏金を作って渡せるようなご時世じゃないよ」と返したが、菅官房長官は「嘉納治五郎財団というのがある。そこに振り込んでくれれば会長にご迷惑はかからない。この財団はブラックボックスになっているから足はつきません。国税も絶対に大丈夫です」と発言。この菅官房長官からの言葉を受け、里見会長は「俺が3億〜4億、知り合いの社長が1億円用意して財団に入れた」とし、「菅長官は、『これでアフリカ票を持ってこられます』と喜んでいたよ」と言うのだ。

 菅官房長官が頼み込むかたちで森元会長の財団に振り込まれたという、IOC委員買収のための裏金疑惑──。もし、里見会長に買収のための資金提供を依頼していたのが事実ならば、菅首相は官房長官という国の中枢の要職に就きながら五輪の招致を金で買うというとんでもない悪事に手を染めていたことになり、森元会長も買収に関与していた可能性が出てくる。

 そして、この“里見マネー”について、高橋被告も今回の「週刊文春」インタビューでこのように言及しているのだ。

「招致活動をしていた頃、僕が里見さんのところへ行って協賛金を出してくれるようお願いしたら、里見さんは、『なに高橋さん。もうお金は出したよ、2億だか3億だか』 と言う。僕はびっくりして『どこに出したの?』と聞いたら、嘉納治五郎財団に出したというのです。聞けば、森さんの“一の子分”として知られ、後に組織委員会副会長も務めた河野一郎さんが頼みにきたといいます」

 高橋被告の証言では、里見会長への裏金提供を申し出たのが菅官房長官ではなく、嘉納治五郎財団の理事長も務めた河野一郎・組織委副会長となっている。

 しかし、菅官房長官はカジノの旗振り役であり、一方の里見会長は当時からカジノ参入を狙っていた関係。カジノ関係者のあいだでは「菅官房長官とセガサミーの関係の近さをもじって”スガサミー”とまで呼ばれている」という声が上がっていたほどだった。さらに、2014年には菅官房長官と里見会長、横浜市の林文子市長(当時)と3人で密会していたとも報じられている。そのため、里見会長の資金提供は、安倍政権でのカジノ解禁、さらに横浜カジノへの参入を目論んで菅官房長官に恩を売ったのではないか、と囁かれてきた。

 今回、高橋被告がインタビューで菅官房長官の名前を意図的に伏せたのか、里見会長が嘘をついたのかは、判然としないが、五輪買収工作のため、里見会長に嘉納治五郎財団への数億円もの資金提供を依頼したという点では、一致している。森元会長が代表理事を務める財団が、IOC委員買収のための資金集めの“ブラックボックス”の役割を果たした可能性は非常に高いと言わざるを得ないだろう。

 実際、この里見マネー以外にも、嘉納治五郎財団は招致委から約1億4500万円が支払われていたとロイターが報道。2020年11月にトーマス・バッハIOC会長の来日時におこなわれた記者会見ではロイターの記者が直接、当時の森会長に「これは何のために使ったのか」とぶつけたのだが、この直後の2020年末、嘉納治五郎財団は活動を終了。疑惑の深掘りを恐れ、慌てて畳んだのではないかと見られている。

 高橋被告は「里見さんには別途、招致委員会に直接、協賛金を振り込んでもらいました。嘉納治五郎財団がどのようにお金を使っていたのかはわかりません」と話しているが、たしかに、謎の金の流れや財団を閉じたあとの資産の行方など、森元会長が説明すべき問題であることは間違いない。

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