会見での質問がこの有様だったのだから、当然ながら、その後も手ぬるい報道ばかりだ。とくに目にあまるのが、やはりテレ朝の報道だ。
本サイトでは繰り返し指摘してきたが、テレ朝とジャニーズの癒着の歴史は古く、また、テレ朝がジャニーズにレッスン場を提供し、そこが性加害の現場になってきたのではないかという疑惑もある。つまり、ジャニーズとの関係を検証・総括することが強く求められるテレビ局のひとつだ。
だが、会見後の『報道ステーション』も、会見翌日の『羽鳥慎一モーニングショー』も、会見でおこなわれた厳しい追及の場面を流すものの、会見の評価は企業ガバナンスの専門家や弁護士といった有識者に任せっぱなしで、『報ステ』の大越健介キャスターは「ジャニーズ事務所が(調査)報告書が求める“解体的出直し”に踏み出すことができるかどうかは、テレビを含むエンタメ業界全体の今後にも大きく影響してくる問題」などと他人事コメント。羽鳥も、批判はおろか会見の感想さえ口にしなかった。
その上、酷かったのが、7月いっぱいでテレ朝を定年退職した玉川徹のコメントだ。玉川氏はジャニー氏の性加害問題をテレビが沈黙してきたことの問題点を語ったのだが、「恥ずかしいのは、今回はBBCの報道をきっかけにして始まっているということですね」と発言したのだ。
言っておくが、テレビは3月のBBCの報道後も沈黙をつづけ、ジャニー氏の性加害問題を取り上げはじめたのは、元ジャニーズJr.のカウアン・オカモト氏が日本外国特派員協会で記者会見をおこなった翌日にジャニーズ事務所が公式コメントを発表して以降のことだ。しかも、テレ朝にいたっては、ジュリー氏が5月半ばに謝罪と公式見解を明らかにする動画と文書を公表するまで2カ月もダンマリを決め込んだのである。果敢に政権批判をおこなってきた玉川氏でさえ、この体たらくとは、まったく情けないにもほどがあるだろう。
しかし、問題はテレ朝だけではない。日本テレビも、会見後に放送された『news zero』では、月曜キャスターを務める櫻井翔のインタビューを放送。そのなかで櫻井は東山に「強い決意、覚悟を感じた」と強調し、「我々としては、とにかくストレートにエンタテインメントを届けるような環境にしなくてはならない」などと発言。いまだ被害者救済のスキームもはっきり示されない状態だというのに、櫻井は“ファンに笑顔を届けるジャニーズ事務所の再始動”を印象づけたのだ。日テレは、こんなたんなるジャニーズ・プロパガンダを垂れ流し、櫻井にキャスターを名乗らせているのである。