前述したように、高市氏が代表を務める自民党第2選挙区支部のパーティをめぐっては、領収証を差し替えた2021年だけでなく、2019年にも山添村支部が22万円を支出。同支部が2019年3月15日、第2選挙区支部に22万円を一括で支払った際の払込票兼受領証も残っていた。
しかし、高市大臣がTwitterで「赤旗の報道に大迷惑をしている」と投稿したのと同じ1月16日には、奈良県選挙管理委員会のHPに山添村支部が訂正した2019年分の政治資金収支報告書が掲載。昨年11月22日に山添村支部はこの払込票兼受領証を削除し、第2選挙区支部が新たに発行した20万円の領収書に差し替えるかたちで、奈良県選挙管理委員会に収支報告書の訂正をおこなっていたのだ。
そして、「赤旗日曜版」編集部が山添村支部を取材したところ、疑惑隠蔽のための偽装工作をうかがわせる証言が次々と浮上したのである。
差し替えられた領収書の日付は、2019年3月15日となっていたが、収支報告書の訂正をおこなった2019年当時の事務担当者である大谷敏治・山添村議が取材に対し、このような証言をおこなった。
「(訂正は)高市事務所とのやりとり(がきっかけ)」
「(20万円の)領収書は、昨年11月の告発後に高市事務所が新たに発行したものを受け取った」
なんと、上脇教授が不記載の疑いで刑事告発した昨年11月以降に、高市事務所が領収書を新たに発行していたというのだ。
しかも、高市サイドの偽装工作疑惑を証言したのは大谷村議だけではなかった。訂正をおこなった収支報告書には、訂正印として山添村支部の現在の会計責任者である西忠護・山添村議の名字である「西」のハンコが押されているのだが、当の西氏もこう証言したのだ。
「19年、21年のいずれの訂正も私は関与しておらず、詳細も聞いていない。大谷さんが訂正するような話は聞いたが、『西』のハンコは私が貸したものではなく、大谷さんが用意した。(20万円の)領収書も見たことがない」
さらに、2019年6月から2022年2月まで同支部の会計責任者を務めた向井秀充・元山添村議も、こう証言している。
「山添村支部の2019年分の収支報告書は私が作成した。しかし20万円の領収書など見たことがない」
「19年分の収支報告書は奈良県選管に提出する前に自民党奈良県連にも確認してもらった。収支報告書は会計帳簿や資料をもとに作成しており、根拠がある。訂正には根拠がないと思う」
そればかりか、山添村支部の現在の代表者である福井新成・元山添村議も、こう述べているのだ。
「訂正は(赤旗)日曜版報道で知った。事前にも事後にも報告はなかった」
つまり、これらの証言をまとめると、刑事告発をされて高市氏側は慌てて20万円の領収書を発行し、山添村支部の現在の代表者や会計責任者が知らないなか、高市氏に違法性が問われないかたちに訂正された収支報告書が選管に提出されていた疑いがあるのだ。
その上、新たな疑惑を突き止めた「赤旗日曜版」編集部の質問に対し、高市事務所は回答せず。1月13日の会見で高市大臣は「赤旗からの取材にも誠意をもって対応している」と主張していたにもかかわらず、だ。
虚偽の領収書差し替え疑惑に、国民に対する虚偽説明の疑惑──。そもそも高市大臣にはこれまでも、約875万円の収入の不記載問題や高市後援会企業の不透明融資問題など、カネをめぐる疑惑がたびたび浮上。また、最近は「嘘つき」疑惑も話題に。昨年、会合で高市大臣が「(安倍晋三・元首相の)国葬反対のSNS発信の8割が隣の大陸からだった」と発言したと三重県議が投稿したことに対し、高市大臣は「そのような発言をすることはない」「そもそも大陸という言葉は使わない」などと否定したが、「AERA.dot」の取材に対し、会合に出席したある市議は、高市大臣からその旨の発言があったことを証言したからだ。
しかも、問題は言い逃れの嘘にとどまらない。もし、高市大臣側が、政治資金規正法違反から逃れるために虚偽の領収書を発行していたとなれば、これは証拠の捏造とも言うべきとんでもない重大問題だ。捜査の進展に注目するだけでなく、高市大臣には収支報告書の訂正にいたった経緯をはじめとして、しっかりと説明する責任があるのは言うまでもない。
(編集部)
最終更新:2023.02.06 07:31