菅氏が弔辞で披露した「銀座の焼き鳥屋」「焼き鳥屋で3時間」エピソードというのは、銀座の焼き鳥屋で3時間にわたって安倍氏に総裁選出馬を説得したというもので、国葬当日、トレンドワード入りするなど大きな話題になった。ちなみに、菅前首相は弔辞で以下のように語っていた。
「総理、あなたは一度、持病が悪くなって、総理の座をしりぞきました。そのことを負い目に思って、二度目の自民党総裁選出馬を、ずいぶんと迷っておられました。最後には、二人で、銀座の焼き鳥屋に行き、私は、一生懸命、あなたを口説きました。それが、使命だと思ったからです。
三時間後には、ようやく、首をタテに振ってくれた。
私はこのことを、菅義偉生涯最大の達成として、いつまでも、誇らしく思うであろうと思います」
ところがこの「銀座の焼き鳥屋」、ほんとうに実在するのかかなり怪しくなってきたのだ。それは、ほかでもない、「あの銀座の焼き鳥屋ってどこの店?」と聞かれた菅氏が驚くべき答えをしていたからだった。
国葬があった夜、菅前首相が統一教会とズブズブの萩生田光一・自民党政調会長と面談したことが話題になったが、その萩生田氏が、9月30日のブログで菅氏とのその際のやりとりをこう書いたのだ。
〈この夜はお互いの日程の合間をぬって菅前総理と二人で安倍さんを偲び献杯しました。「再度総裁選への挑戦を決意させた銀座の焼鳥屋ってどこですか?」と聞くと、「それが日程にも書いてなくて思い出せないんだよ。萩生田、聞いて探してくれ」と頼まれました。当時、酒を飲まなかった二人が三時間もいた焼鳥屋さんはさぞ迷惑だったでしょうね(笑) 探してみることにしました。〉
そう、菅前首相は「銀座の焼き鳥屋」と具体的に語っておきながら、それがどこの店か「思い出せない」としてまったく答えられなかったのである。
いったいそんなことってありえるのか。そもそも、首相経験者である安倍氏と総裁選出馬について密談をするのに、予約もなく知らない店にふらっと入るなど考えられない。どちらがセッティングしたとしても可能性のある店は数店であり、どの店だったかくらい少し調べればわからないはずがない。
にもかかわらず、菅氏が「思い出せない」「日程にも書いていない」などというのは、実は、銀座の焼き鳥屋なんて行っていないからではないのか。