実際、今回の参院選で生稲氏を自民党が新人として擁立したのは、現職で安倍派の中川雅治・元環境相が引退するためで、後任として生稲氏を担ぎ出したのは、自民都連会長を務める萩生田光一・経産相と世耕弘成・自民参院幹事長という安倍元首相の側近連中。安倍派中堅も「安倍、世耕両氏に恥をかかせるわけにはいかない。安倍派は一丸となって生稲氏をやる」(毎日新聞4月29日付)と話しているとおり、公示日の生稲氏の街頭演説に安倍氏が直々に駆けつける力の入れようだ。
さらに、生稲陣営の選対本部長を務めるのは、やはり安倍元首相の最側近である下村博文・元文科相。下村氏といえば、国民に約束した加計学園からの「ヤミ献金200万円」疑惑についての説明からいまだ逃げつづけている身であり、そんな人物が選対本部長を務めている時点でどうかしているのだが、それはともかく、下村氏は安倍氏が首相在任中に自民党の憲法改正推進本部長に充てたように改憲派の筆頭でもあるゴリゴリの極右である。
つまり、生稲氏が今回、社会保障の質問には回答しない一方で改憲関連の質問にだけははっきりと「改憲すべき」と回答した背景には、安倍元首相と安倍が率いる自民党極右勢力の存在があると見て間違いないだろう。
政策なんて何も考えていなかった生稲本人が当選後の安倍派入りを見据えて、この質問だけは答えたのか、あるいは、安倍元首相の取り巻きがすでに生稲陣営に送り込まれていて、代わりに回答したのか。詳細はわからないが、少なくとも、今回の一件は生稲議員が当選後、安倍元首相が率いる自民党極右勢力の仲間になることを如実に証明したといえるだろう。
実際、生稲氏の「安倍色」は、批判を浴びて回答し直した候補者アンケートにも如実にあらわれている。
実際、当初のアンケートでは「回答しない」と答えていた「防衛費をどうすべきか」という質問には「ある程度増やすべき」とし、「「敵基地攻撃能力」保有の賛否」にいたっては「賛成」と回答。また、「選択的夫婦別姓の賛否」についても賛成・反対には明確に答えず、「まずは通称使用の拡大」などと安倍派極右議員らと同様の主張を繰り出し、挙げ句、「同性婚の賛否」については明確に「反対」と回答しているのだ。