これまでも、産経新聞の阿比留瑠比氏やNHKの岩田明子氏、そして元TBS記者の山口敬之氏らが「安倍御用ジャーナリスト御三家」と呼ばれてきたが、この一体ぶり、代理人ぶりを見れば、峯村氏も同様だと言わざるを得ないだろう。
事実、朝日の調査結果によると、峯村氏は「安倍氏とは6年ほど前に知人を介して知り合った。取材ではなく、友人の一人として、外交や安全保障について話をしていた。安倍氏への取材をもとに記事を書いたことはない」と説明。安倍氏との関係は首相時代からのものであり、また、この期に及んで最高権力者だった安倍氏を「友人」など呼んでいるのだ。他社の記事にさえ平然と介入する峯村氏の言うことを信じられるわけがなく、朝日は峯村記者が自社の記事に介入した事例はないのかなど徹底検証する必要があるのは言うまでもない。
いや、必要なのは朝日の検証だけではない。繰り返すが、峯村氏は『ひるおび』の曜日レギュラーコメンテーターであり、同番組だけではなく『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)などのワイドショーや報道番組にも数々出演してきた。これらの番組に峯村氏は「中国や米国に詳しい朝日の記者」として出演してきたが、ところが実際には「安倍元首相の代理人」だった、というわけだ。
首相を辞めたとはいえ、メディアにはいまなお安倍氏の影響力は色濃く残っている。つまり、『ひるおび』が峯村氏をレギュラーコメンテーターに抜擢したのも、安倍氏と近いことを考慮した可能性も十分考えられるだろう。
しかも、峯村氏は、朝日の退社を公表する直前から、安倍氏との関係を誇示するような行動にも出ていた。「週刊ダイヤモンド」に検閲を要求した10日後、また峯村氏が朝日を退社することを公表する前日の先月3月19日、峯村氏はTwitterにこんな投稿をおこなっていた。
〈おかげさまで2年間の北海道大学公共政策学研究センター研究員としての任期を終えました。学生のみなさんとは政策シミュレーションを通じて活発な議論をしてきました。みなさん意欲的で勤勉でやりがいがある授業でした。最終講義ではスペシャルゲストとして安倍元首相に御登壇いただきました。〉
〈安倍氏とは日頃から外交政策などについて意見交換をしていますが、学生からの鋭い質問によって興味深い外交交渉の裏話が披露されました。一連の講義を通じて多くの学生が外交や安全保障に興味を持っていただき「人生が変わった」と有り難い言葉をいただきました。みなさんのご活躍を祈念しています!〉
そして、この峯村氏の投稿を安倍氏も引用リツイートし、〈当日は吹雪の中刺激的なひと時でした〉と投稿している。
元首相が、わざわざ北海道まで出向いて記者の講義に登壇する──。時系列を考えれば、安倍氏に代わって峯村氏が検閲に動いたことの「ご褒美」「お返し」のようにも見えるが、このような持ちつ持たれつの癒着関係を、朝日退社を控えて峯村氏は自らひけらかしていたのである。
大手メディア出身の安倍御用ジャーナリストといえば、TBS退社後、安倍氏の礼賛本を出版、ワイドショーから引っぱりだこになった山口敬之氏がいるが、峯村氏も同じ道を歩むのだろうか。
実際、ネトウヨ界隈はすでに峯村氏の今回の処分をめぐって、お門違いの朝日批判を繰り出して、峯村氏を擁護している。たとえば安倍応援団のひとりである上念司氏も〈これは本当に酷い。権威主義国家の秘密警察のような取り調べ、結論ありきの一方的な処分です〉などと投稿。しかも、峯村氏もこれをリツイートしており、今後、「正論」や「WiLL」「Hanada」といったネトウヨ論壇から引く手あまたとなることは間違いない。
まあ、ネトウヨ論壇でなら勝手にやってくれればいいが、問題はやはり、峯村氏がすでに、『ひるおび』をはじめとするワイドショーなどでコメンテーターを務めていることだ。
特定為政者の息のかかった人物を起用することは、世論誘導の危険性がある。しかも、峯村氏は安倍氏の代理人として他社の報道を検閲しようとした人物なのだ。このような人物に情報番組のコメンテーターをやらせていいのか。昨日7日放送の『ひるおび』は、峯村氏がレギュラーの木曜日だったにもかかわらず峯村氏は出演しなかったが、今後どうなるのか。こちらも見届ける必要がある。
(編集部)
最終更新:2022.04.08 11:01