実際、最初に「不倫疑惑」が持ち上がった京都への不倫デートを楽しんだ出張では、和泉氏と大坪氏の2人が京都大学iPS細胞研究所に赴き、ノーベル賞受賞者の山中伸弥所長に対して、翌年から山中所長の取り組むプロジェクトに「国費は出さない」と言い放ち、大坪氏が「iPS細胞への補助金なんて、私の一存でどうにでもなる」と恫喝していたことがわかっている。この予算カットは、文科省が反対していたものを和泉氏が後ろ盾となるかたちで大坪氏が強硬に主張したものだ。
オープンな場で決めるべき予算の問題を密室で恫喝する。これだけでも2人とも辞職モノだったのだが、問題はもっと根深い。こうした予算配分自体が行政内部で何の手続きも踏んでいない大坪氏の独断専行であったことが内部の公式の会議で明らかになり、当時、本サイトがいち早く取り上げたように、和泉氏が室長、大坪氏が次長を兼任した内閣官房の「健康・医療戦略室」を舞台に、和泉氏の後ろ盾によって大坪氏が緊急的な感染症対策に使われるような予算約80億円を無理やり自分の担当するプロジェクトにつけていたことが、AMED(独立行政法人日本医療研究開発機構)理事長による告発で明らかになっている(詳しくは過去記事参照→https://lite-ra.com/2020/02/post-5254.html)。
しかも、AMEDの方針にことごとく介入する大坪氏の高圧的なやり方に対してAMED側が反発すると、和泉氏が直々に乗り出し、2019年7月にはAMEDの幹部職員3人に対し、こんなセリフを吐いていたことも暴露されている。
「大坪次長もさ、激しくてみなさんとうまくいっていないかもしれないけど、彼は健康・医療戦略……彼女か、健康・医療戦略室次長に残すし、AMED担当室長は彼女になるから。そういうつもりでちゃんと付き合ってもらわないと困るよ」
「ちゃんとできていないようだったら、もともとの出身省庁からこのポストを置くのはまずいってことになる」
「財務省は全面的に、皆さん方の頭を飛び越えて、本省の各原課も飛び越えて、各々会計課と直接やるから。あなた方がどういうつもりか知らないけど、そんな生易しい話じゃないからさ」(「週刊文春」2020年2月27日号/文藝春秋)
山中教授への恫喝、コネクティングルーム出張、さらには愛人が思い通りに動かせる組織にすべく人事や予算をちらつかせて圧力をかける──。まさに私利私欲によって行政を歪める「政治の私物化」にほかならないが、和泉氏の「恫喝」問題はほかにもある。それは、和泉氏に大きな注目が集まるきっかけとなった、加計学園問題だ。
ご存知のとおり、前川喜平・元文科事務次官が、獣医学部新設をめぐって和泉首相補佐官から「総理は自分の口からは言えないから、私が代わりに言う」と“恫喝”され、このほかにも獣医学部新設を早く認めるように複数回言われたことを証言したからだ。