「『こども・若者』輝く未来実現会議」座長の加藤勝信・前官房長官(自民党HPより)
いじめや児童虐待、教育格差など子どもの問題にかんする政策の司令塔として2023年度に創設される予定の「こども庁」の名称が、自民党内の極右議員らの反対によって「こども家庭庁」に改められた件に対し、批判の声が相次いでいる。
そもそも「こども庁」創設の構想は、菅政権時の今年2月から自民党の山田太郎参院議員や自見はなこ参院議員ら若手有志議員がスタートさせた勉強会が起点となっているが、そのときは「子ども家庭庁(仮称)」としていた。だが、第6回目の勉強会に招かれた虐待サバイバーである風間暁氏が「家庭は地獄でした」と自身の経験を語り、その言葉を受けて「こども庁」に変更。菅義偉首相も岸田文雄首相も名称を「こども庁」としてきた。
にもかかわらず、政府は15日になって自民党の会合において「こども家庭庁」に変更する修正案を示し、これを自民党が了承。17日におこなわれた自民党総務会でも了承されたため、政府は早々に「こども家庭庁」の創設を含む子ども政策の基本方針を閣議決定する方針だ。
「家庭は地獄」という当事者の声を受けて変更した経緯があったというのに、わざわざ「こども家庭庁」に戻す──。この報道に、「子ども時代、家庭に恵まれなかった」経験を持つ俳優の高知東生は自身のTwitterで〈苦しんだ人や現場で奔走している人の声がかき消されてしまうのは胸が痛む。彼女たちは親にそうされて傷ついてきた。せめて話し合いや説明の場を設けて欲しい〉と投稿。このツイートには1万件を超える「いいね」がついている。
だが、問題なのは、名称を変更したことだけではない。実は、政府が「家庭」という言葉を足してきたのは、自民党の右派政治家たちの意向が働いた結果だった。
14日に名称変更をいち早く報じた共同通信によると、〈伝統的家族観を重視する党内保守派に配慮した〉とし、16日付の東京新聞もこう報じている。
〈新組織の名称に「家庭」を加えたのは、家庭が一義的に子育ての責任を負うべきだという自民党保守派の主張に配慮した側面もあるとみられる。基本方針案を審査した「『こども・若者』輝く未来実現会議」座長の加藤勝信・前官房長官は会合で「子どもは家庭を基盤に成長する」と強調した。〉
しかも、その自民党の右派の動きの裏には、例のトンデモ極右教育理論の提唱者がいた。
ほかでもない、あの「親学」を提唱する高橋史郎氏だ。