鈴木俊一財務相(財務省HPより)
コロナ禍を無視した愚策中の愚策である「5万円クーポン配布」問題だが、昨日3日、財布の紐を握る財務相から信じられない発言が飛び出した。
18歳以下の子どもに対する10万円給付では5万円分をクーポンで支給するのに967億円の事務費がかかることが判明して非難が殺到しているが、この事務費について鈴木俊一財務相が「過去の類似事業と比較して、過大な水準ではない」と発言したからだ。
まったくふざけるのもいい加減にしろ、という話だろう。現金給付の事務費は280億円で、それは5万円でも10万円でも変わらない。クーポン配布などせずに10万円を現金配布にすれば事務費967億円はかからないのだ。だからこそ「税金の無駄遣い」だと言われているのに、過去の事業と比較して何の意味があるというのか。
その上、鈴木財務相は「クーポンによる給付は、消費喚起という意味で、より無駄のない給付が可能となる」と発言し生活支援と経済対策を混同させクーポン配布を正当化したが、これは鈴木氏の義理の兄にあたる麻生太郎・前財務相の意向であることは明白。事実、麻生氏は昨年の一律現金給付について「お金に困っている方の数は少ない」「個人の貯金に回っただけ」などと言い、厳しい生活を強いられている国民を無視。また、当初は一律現金給付を否定して、「商品券とかいうものは貯金には(お金が)あまりいかないんだよね」と発言していた。今回のクーポンを配るという愚策も、こうした麻生氏の「なんとしてでも貯金させない」という強い意思が働いているのである。
事実上の“世襲人事”による麻生太郎の名代が、コロナの影響で苦しい状態におかれている人が増加している現実もスルーして967億円もの無駄金を投じてでも「経済を回せ」と迫る──。もはや鬼畜の所業と言わざるを得ないが、やはり聞き捨てならないのは、967億円を「過大な水準ではない」と鈴木財務相が発言したことだ。
何をバカな。言っておくが、967億円というのは凄まじい予算額であり、過去最大となる約36兆円を計上している岸田政権のコロナ経済対策のうち生活困窮者に対する支援策に付けられた予算額と比較すれば、それがいかに巨額であるかは一目瞭然だ。
たとえば、岸田文雄首相が会見で10万円給付以外の困窮者対策として筆頭に掲げたのは「生活困窮者自立支援金」だったが、厚労省が今回の補正予算案でこれに付けている予算額は937億円。つまり、クーポン配布の事務費よりも低い予算額でしかないのだ。
しかも、この「生活困窮者自立支援金」は、コロナの影響で減収した人向けに最大200万円を無利子で貸す「特例貸し付け」を上限まで借りた人が対象であり、さらにはハローワークへの求職を申し込んでいないと対象にならない。ようするに200万円もの借金を背負い、求職していないと対象にならないという厳しい要件をクリアしないといけないシロモノなのだ。岸田政権はここにクーポン配布による無駄な事務費967億円を振り分け、要件のさらなる緩和や支給期間の延長などの拡充をおこなうべきではないのか。