つまり、7月なかばの時点で都民は「安全安心」の状況ではなくなっていたというのに、小池都知事は体制の立て直しや感染拡大を食い止めるための施策を打つこともなく、むしろ東京五輪開催というアクセルを進んで踏んでいたのだ。
しかも、この時点で軽症・無症状者のフォローアップのみならず、病床逼迫で医療崩壊に陥ることは火を見るより明らかだった。だが、小池都知事は前述した福井県のような臨時病床を新設することもせず、世界の都市でおこなわれているような無料のPCR検査場さえ設けることもしなかった。
それは東京五輪開催を目前にして都が感染拡大で危険な状況にあることを既成事実にさせないために避けたというのもあるだろうが、しかし、いちばんの理由は、菅首相と同様、小池都知事もコロナ患者のことを「自己責任」「自助でどうにかすべき」と考えている、ということだ。だからこそ、「自宅を病床に」だの、自宅死した男性について「基本的なところをお守りいただきたい」などと平然と暴言を吐くのだろうし、新規感染者数が5000人を超えてもいまだに涼しい顔で「買い物を減らせ」と都民任せのことしか言わないのだ。
冷酷無残な「自己責任」論者を首長にした結果、「制御不能」「災害レベル」に陥ってしまった東京。これはリコールすべきレベルの大惨事であり、命を軽視するこの都知事に対し、都民はもっと怒りをぶつけるべきだろう。
(水井多賀子)
最終更新:2021.08.13 11:56