上野千鶴子らによる五輪中止を求める署名
水際対策のザル状態や、「バブル方式」の破綻が次々明らかになっている東京五輪。お膝元の東京都ではデルタ株の感染が広がり、完全に第5波が始まっている。五輪開催中に東京の新規感染者が1000人を超えるのは確実だろう。
そういったことを考えると、五輪はもはや有観客か無観客かなどと言っている段階ではない。医療崩壊で多くの国民が命を失わないためにも、即刻中止するべきなのだ。
実際、海外のメディアでは、いまも中止を求める強い声が上がっている。たとえば、6月23日には、フランスのクオリティペーパー「Libération」は、「東京パンデミック大会を中止しろ!」というタイトルで、こんな声明を出した。
〈まず第一に、手遅れになる前に、この大会の中止を求めている東京や日本の人々の声に耳を傾けなければならない。ここ数カ月に行われた世論調査によれば、日本の人々の60%から80%が、オリンピックを望んでいない。
また、感染拡大と戦っている人の声も聞こう。オリンピックに動員される可能性のある日本中の医療従事者も反対を表明している。東京オリンピックは、日本をさらなるエピデミックの危機に晒すだけでなく、日本の医療システムを弱体化させることになる。
(中略)
大惨事を避けるためにも、この世界的な危機のなかで、東京オリンピックを一旦停止し再考すべきだ。〉
ところが、肝心の日本のマスコミではこうした中止論が急速にしぼんでいる。5月末には五輪のスポンサーでもある朝日新聞が社説で開催中止を主張、6月初め頃までは他のメディアでもおおっぴらに「中止」を主張するコメントや意見が紹介されていたが、6月なかば、サミットの共同宣言に五輪開催支持が盛り込まれ、6月21日、5者協議で「上限1万人の有観客開催」が決まると、議論は「開催か中止か」でなく、「有観客か無観客か」「どう安全に開催するか」にすりかえられてしまった。
そして、これに連動するように、各社が実施している世論調査でも、五輪中止を求める割合が少なくなっていっている。5月の段階では、中止や延期を求める声が70%以上に達していたのに、6月はじめの読売新聞の調査では、「開催する」が50%、「中止する」は48%に。
さらに、直近に行われたJNNの世論調査では、「無観客で開催すべきだ」35%「観客数を制限して開催すべきだ」26%に対して、「中止すべきだ」は20%、「延期すべきだ」は14%にとどまっている。