コパ・アメリカは東京五輪と同じように昨年開催される予定だったが新型コロナを理由に延期となり、さらに開催地となったブラジルでは感染が拡大しており、世論調査では「反対」が6割超えに。さらに〈南米諸国の感染症専門家などからも「複数の国から選手団を受け入れるのは問題だ」といった批判が上がっていた〉という(毎日新聞ウェブ版17日付)。だが、大会を主催する南米サッカー連盟は「世界で最も安全なスポーツイベントになる」と発信。今月13日から無観客で開幕した。
感染拡大の最中の開催、開催反対の世論、主催者の「安全」という掛け声……「無観客」という点以外では東京五輪を彷彿とさせる開催経緯だが、いざ開幕すると「世界で最も安全なスポーツイベントになる」というのが看板倒れであることが露呈。というのも、大会では毎日PCR検査を実施しているというが、開幕早々から陽性者が続出し、ブラジル保健省は15日、選手やスタッフ33人を含む52人が陽性と確認されたと発表。「サッカーダイジェスト」に掲載された現地発の記事によると、選手の陽性者は23人にものぼり、これは参加10チーム全選手の約9%にあたる陽性率になるという。
当然、選手からも主催に対する怒りの声があがっている。たとえば、陽性反応が出たというボリビア代表であるマルセロ・モレーノ選手は、自身のインスタグラムにこう投稿したと前出「サッカーダイジェスト」記事は伝えている。
「CONMEBOL(編集部注:南米サッカー連盟)よ、見てみろ! すべてはお前らのせいだ。もし誰かが死んだらどうする? 選手の命に価値はないのか!」
多くの人が抱いていた懸念が的中し、選手や大会関係者に感染が広がっていくコパ・アメリカ。しかも、コパ・アメリカは前述したように参加チーム数は10というスポーツイベント。200を超える国・地域から選手が参加し、メディア関係者を含めると約8万人もの人びとが集まる東京五輪は比較にもならないほど大規模なものだ。菅首相は「選手には毎日検査をする」ことを安全対策として語ったが、コパ・アメリカのように連日陽性者が続出し、メダル数よりも感染者数に注目が集まる「一大クラスターイベント」になる可能性はけっしてゼロにはできないものなのだ。
にもかかわらず、菅首相は「ワクチンと毎日検査」を念仏のように唱えるだけ。さらにはコパ・アメリカとは違い、観客まで入れて東京五輪を開催しようとしている。これを恐怖と言わずしてなんと言うおうか。
菅首相が有観客に執着した結果、議論は「開催か中止か」ではなく「有観客か無観客か」にシフトし、いまや「観客は何人ならOKか」という話にまで移っている。しかし繰り返すが、人命第一ならば「中止」の一択しかないのだ。
(水井多賀子)
最終更新:2021.06.18 12:04