つまり、報道では「ワクチンの大規模接種会場に転用」という点ばかりが強調されているが、実際には「感染拡大を招きかねない」という批判をまったく無視し、いまだにお祭り騒ぎイベントをやる気でいるのだ。
しかし、なぜここまで批判を集めながらも「ライブサイト」計画をけっして止めようとしないのか。その背景にあるのは、「スポンサー至上主義」と電通利権だ。
まず、そもそも菅義偉首相は「観客を入れての開催」に躍起になっているが、パブリックビューイングを中止することは観客を入れての大会開催の否定にもつながる。観客を入れて開催する方針である以上、パブリックビューイングなどのイベントを中止するわけにはいかないのだ。
では、どうしてそれほどまでに観客を入れることにこだわっているのかと言えば、東京五輪のスポンサー企業が観客を入れることにこだわっているためだ。
実際、元朝日新聞記者で探査報道を掲げる「Tansa」編集長の渡辺周氏のレポート(外部リンク→https://tansajp.org/investigativejournal/8318/)によると、4月28日に実施された組織委とパートナー企業の会議では、無観客での実施について組織委が言及したところ、パートナー企業からは、こんな声があがったというのだ。
「なぜ今、無観客といい始めるのか。驚愕している。釈然としない」
「五輪が1年延長したとき組織委は、観客制限はせず『フルスタジアム』で開催するといっていた。昨年3月の時点で専門家はコロナの収束には2、3年はかかるといっていたのに、なぜ今頃最悪のシナリオが出てくるのか」
パートナー企業が観客を入れることにこだわっているのは〈自社のキャンペーンや顧客の接待のため座席枠を確保している〉ためだが、観客を入れて開催されれば人の動きが活発になり、感染拡大の引き金になることは必至。にもかかわらず、スポンサー第一の電通が牛耳る組織委は市民の命と安全を守ることよりもスポンサーの機嫌を選んでいるのである。
聖火リレーをめぐっても先導するスポンサー企業の広告車両がバカ騒ぎを繰り広げて非難が殺到したが、結局、ここでもスポンサーの意向が優先される。「平和の祭典」ではなく「商業オリンピック」であることの何よりの証左ではないか。
そして、その「商業オリンピック」によって暴利を貪るのが、電通だ。