首相官邸HPより
本日6日、国民投票法改正案が衆院憲法審査会で可決された。懸念されていたCM規制については「法律の施行後3年以内に検討し、必要な措置を講ずる」と附則が明記されたが、「コロナ禍にやることか」「不要不急」「コロナにかこつけた火事場泥棒」などという批判が起こっている。
当然だ。この緊急事態宣言下で、大阪などは医療崩壊の真っ只中にあり、東京も後を追いかけるように重症患者数が増加。また、イギリス由来の変異株にくわえ、インドで猛威を振るっている変異株が国内で確認された一方、ワクチン接種は一向に進んでいない。医療提供体制やPCR、ゲノム解析といった検査体制、水際対策の強化はもちろんのこと、緊急事態宣言延長による支援の拡充など、憲法改正などまったく必要なくすぐに対応がとれる問題の議論が山積み状態だ。
しかし、こうした喫緊の課題を差し置いて与党が推し進めている問題法案は、国民投票法改正案だけではない。なんと、コロナ対策にとって重要な議論の場である衆院厚労委員会では「そんなことをやってる場合か!」と言わざるを得ない、ある法案の審議がおこなわれており、与党は明日にも強行採決に踏み切るのではないかとも言われているのだ。
それは、「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案」の審議。なんと、年金を含む年収が単身世帯で200万円以上の75歳以上の医療費を現行の1割負担から2割負担に引き上げよう、という法案だ。
コロナ渦中の厚労委員会で、コロナ対策ではなく、まさか年収200万円のギリギリの生活を余儀なくされている高齢者の医療費負担を2倍にしようという法案が審議されている──。昨年、予算委員会などで当時の安倍晋三首相をめぐる「桜を見る会」問題の追及がおこなわれると、安倍応援団を中心に「こんなときに『桜』をやっている場合か」などという声があがったが(ちなみに、その後、安倍首相が「桜」問題で少なくとも118回も虚偽答弁をおこなっていたことを衆院調査局が認めたように国会審議を空費させていたのは安倍首相だった)、「100年に1度とも言われる世界的パンデミックの最中に医療費値上げ審議」とは、これこそ「そんなことやっている場合か!」という話だろう。
現に、この法案審議では、野党議員から「大阪や兵庫は医療崩壊状態で、こんな審議をしていて国民にコロナの危機感は伝わらない」「医療崩壊や変異株について議論すべき」という声や、立憲民主党や共産党が国会に提出している「コロナ特別給付金法案」を審議すべきだという声があがってきたが、自民党所属の渡嘉敷奈緒美・厚労委員長はそれらを無視してきた。