しかし、昨日の衆院予算委員会では、正剛氏を総務大臣秘書官につけていた問題について「総務大臣秘書官というのは(大臣が)任命すればなれる。(選挙に通らなければならない)世襲よりはるかに甘いことをやっている」と批判されると、菅首相はキレ気味に、めずらしく原稿もほとんど見ず、長々とこう抗弁したのだ。
「まずですね、秘書官にすることにどうして……ルールのもとに秘書官にしてるんです。世襲制限というのは私は言い続けています。息子3人いますけど、政治家には誰もしません。これは了解をしています。それと、いまもう40(歳)ぐらいですよ、もう。私は普段、ほとんど会っていないですよ」
「いずれにしろ、私自身は、自分の政治信条として、世襲は制限するということを私ずっと言い続けてきましたから、そこはやり遂げますし、秘書官やったのも10年以上前のことですよ。東北新社の社長っちゅーのは私の秋田の同じ出身ですから、まあ先般お亡くなりになりましたけど、いろんなご縁があって応援してもらったことは事実ですけども、それといまの私の長男との、結びつけるっちゅーのは、それはいくらなんでもおかしいんじゃないでしょうか。私、完全に別人格ですからね」
「私の長男にもやはり家族がいますし、プライバシーももちろんあると思いますよ? それと、長男が長男がと言いますが会社の一社員ですから。そういうなかで、いま言われているような不適切なことがあったかどうかについては、総務省の政治倫理ですか? 審査会でそこはしっかり対応してもらいたいというふうに思います」
あきらかな職権濫用で息子を特別職の公務員に引き立て、自分の伝手でコネ入社させた結果、今回の違法接待問題が浮上したのだから、これらの問題を結びつけるのは当たり前なのに「おかしい」とまくし立て、「別人格」「長男にもプライバシーはある」「会社の一社員」と言い張る。しかし、「おかしい」のは明らかに菅首相のほうではないか。
しかも、菅首相は息子だけではなく、実弟をめぐっても同種の疑惑が取り沙汰されている。菅首相の実弟が脱サラして起業した製菓店が東京駅構内のキオスクに出店し、2002年に破産宣告を受けたものの、今度はJR東日本の子会社である駅ビル運営会社の幹部となり、重役にまで昇りつめていたことをジャーナリストの森功氏が「文藝春秋」2020年12月号であきらかにしているのだ。この問題についても、運輸族だった小此木彦三郎元通産相の秘書時代から築かれたJRとの関係をもって菅氏が弟の面倒を見てきた結果なのではないかと見られている。
ようするに、菅首相は「息子は別人格」だと言うが、政治家としての権力を自身の親族のためにフル活用してきたのが実態なのだ。国民には「自助」を強いているのに、である。
マスコミはこの問題について、ワイドショーなどは大きく取り上げていない。しかし、このまま放置すれば、安倍政権時代と同じく、政治の私物化、親族とお友だちへの利権分配が繰り返されていくことになるだろう。
(編集部)
最終更新:2021.02.05 12:51