それにしても、いったいなぜ、こんな乱暴で危険な方針転換が行われたのか。実はその背後には、厚労省の通達があった。
厚労省は1月8日、全国の自治体にあて、「新型コロナウイルス感染症に関する保健所体制の整備と感染拡大期における優先度を踏まえた保健所業務の実施ついて」と題する「事務連絡」を通達。〈今般、全国の感染者数と重症者数が高い水準で推移している状況を踏まえ、全庁的な体制整備を図るとともに、業務の重点化が重要になってきた〉として、昨年11月に示していた「積極的疫学調査における優先度」に基づいて、積極的疫学調査を絞り込むよう方針を示していた。
ようするに、「保健所の負担を軽減するために、疫学調査は一部でいい」ということらしい。
たしかに、保健所の業務は過重になっているうえ、感染者の増加で濃厚接触者の割り出しや連絡、検査、療養施設の手配などに時間を要し、手が回らなくなっている。
しかし、キャパシティがいっぱいだったら、本来は保健所とは別の機関や新設の組織をつくってでも、検査体制や追跡調査体制、隔離施設を拡充すべきだろう。
ところが、厚労省はそれを一切やらず、逆に疫学調査をどんどん縮小しようというのだ。厚労省は第1波のときも、保健所や隔離療養施設のキャパシティを理由に検査抑制を正当化し、保健所機能や隔離療養施設の拡充をサボタージュしてきたが、全く同じことをやろうとしている。
初期から徹底検査によって感染拡大を早期に抑えてきた和歌山県の仁坂吉伸知事も、大都市圏で相次ぐ「積極的疫学調査の縮小」について、1月22日に県のホームページでこう警鐘を鳴らしている。
〈いくら、住民の行動を抑制して感染はある程度減らしたにしても、最後に感染拡大の防止に究極的に影響を及ぼしうるのは、積極的疫学調査です。これが疎かになっていては、感染は止められません。〉