実際、3連休の初日となったきょう、各地の高速道路や新幹線、羽田空港は行楽地へ向かう人々でごった返した。これこそ、菅政権の「GoTo」強行と見直しの遅れが国民から危機感を奪った結果だ。
いや、それどころか、菅政権のやり方をみていると、むしろ意図的にこういう状態をつくり出そうとしたのかもしれない。
多くの国民が「GoTo」を使おうとしていたのはこの3連休であり、もし3連休前に「GoTo」見直しを打ち出せば、東京除外のときのようにキャンセル料を補填する必要が出てくる。そこで、3連休の初日まで見直しの表明を引っ張り、その内容も3連休の旅行にはまったく影響しない「新規予約の一時停止」というかたちにしたのではないか。
つまり、キャンセル料を補填したくないから、「GoTo」見直しを遅らせ、その内容を曖昧にしたというわけだ。
しかし、キャンセル料が補填されないなら、専門家がいくら警告しても多くの人は旅行を行くのを止めることはない。なぜなら、「GoToトラベル」を予約した人が旅行を直前にキャンセルした場合、キャンセル料は予約者にかかる上、GoTo割引分が適用されない“通常料金”(割引前の旅行代金)でのキャンセルとなる。つまり「お得」なつもりがキャンセルすると「損」をしてしまう設計になっているからだ。
しかも、菅政権はいまだキャンセル料の取り扱いについて何もはっきりした方針を打ち出していないため、今後も「GoTo」で予約済みの国民の多くは「キャンセルしたら逆に損になるかも」「それならば利用しよう」と旅行を強行するだろう。そうなれば、仮に後で補填することになったとしても、キャンセル件数は少なくなっているため、政府のキャンセル料補填金額は小さくなる。
菅首相がここまで「GoTo」見直しを打ち出さなかった理由については、来日していた国際オリンピック委員会のトーマス・バッハ会長に“東京オリンピック開催への悪印象を残しかねないため”だと報じられていた。それもあっただろうが、こうしてみると「GoTo」キャンセル料補填をケチることがいちばんの目的だった可能性が高い。
しかし、そのキャンセル料をケチったことが、何を引き起こすのか、菅首相はわかっているのか。多くの専門家が指摘しているように、この連休の人出によって感染拡大は危機的状況になるのは確実なのだ。まさに菅首相が国民の健康や生命などどうでもいいと考えている証拠だろう。