ようするに、今回伝えられた『NW9』に対する菅官邸からの「総理、怒っていますよ」というクレームは、NHKの現場にとっては『クロ現』事件を思い起こさずにはいられない、紛うことなき“恫喝”にほかならなかったはずだ。
実際、NHK幹部職員は「この件は理事のあいだでも問題となり、局内は騒然となりました。総理が国会初日に生出演するだけでも十分異例。そのうえ内容にまで堂々と口を出すとは、安倍政権のときより強烈です」と証言している。
安倍政権のときより強烈な圧力──。いったい、この日の『NW9』で菅首相は何にキレたのか。あらためて振り返ってみよう。
この日の菅首相の生出演では、『NW9』のキャスターを務める有馬記者と和久田麻由子アナウンサーのふたりのほか、菅官邸からの恫喝を受けた政治部トップである原聖樹政治部長を交えて進行。所信表明演説で菅首相が打ち出した「新型コロナ対策と経済活動の両立」や「温室効果ガス削減」などについての質問が飛び、菅首相も淡々とそれに答えていた。
そして、生出演の終盤に、話題は所信表明演説で菅首相がひと言も触れなかった日本学術会議の任命拒否問題へ。菅首相は「総合的・俯瞰的」「民間出身者や若手研究者、地方の会員も選任される多様性が大事」などと話したが、この説明に対し、有馬キャスターはこう質問を重ねたのだ。
「総理は国民がおかしいと思うものは見直していくんだということを就任前からおっしゃっていたと思います。で、この学術会議の問題については、いまの総合的・俯瞰的、そして未来的に考えていくっていうのが、どうもわからない、理解できないと国民は言っているわけですね。それについては、もう少しわかりやすい言葉で、総理自身、説明される必要があるんじゃないですか?」