実際、この日の『ひるおび!』でも、政治ジャーナリストでも評論家でもないデーモン小暮氏も柿崎氏が受けたことは意外としたものの、「起用する側は、首相はしたたかだなと思った。ようするに、先程来、みんなが話しているように、メディアの目から見て、政治を批判する立場にもなり得る人を自分のところに取り込んでスタッフにする。その視点はやっぱりしたたかなんだな、菅さんはっていうのが第一印象」と語っていた。
そんななか、あれだけ官邸に精通しているはずの田崎氏だけが、「もやもやする」「意図がわからない」と首をひねる。もしかしてこれって、「なぜ政権を擁護してきた自分に声をかけずに、政権を批判してきた柿崎を抜擢したのか」と腹を立てているのか。
しかも、いつも内閣の動きを優先してリークしてもらっている田崎氏がこの人事についてはまったく知らされていなかったらしい。先に紹介したように、田崎氏は柿崎氏の首相補佐官就任を知ったのは「先週金曜日」、つまり9月25日午前中と言っていたが、本サイトがこの動きをキャッチしたのは9月23日水曜日だ。24日木曜日に聞いたとテレビで話していた政治コメンテーターもいる。つまり、田崎氏はこの問題では完全に蚊帳の外に置かれていたのだ。政権との距離の近さだけが存在理由である田崎氏としては怒るのも無理はない。
とはいえ、菅首相の肝いり人事ということで、露骨には批判できない。それが「もやもや」発言につながったのだろう。
しかし、番組が進むにつれ、田崎氏の口から愚痴めいた言葉や嫌味も聞かれ始める。笑ったのが、やはりコメンテーターとして出演していた龍崎孝・元TBS政治部長が、柿崎氏と毎日新聞入社同期だったと言って新人研修時のエピソードを紹介したときだった。
柿崎氏が自身の将来について「政治部に行きたい」「政治部に行って政治記者になって将来はそれをテコに政治家になりたい」と語っていたというエピソードを受けて、MCの恵が「ひょっとしたら、そのとき、龍崎さんに吐露した本心はひょっとしたら、新聞記者も共同通信もコメンテーターも、政治ジャーナリストも含め、すべてがステップかもしれない。ねえ、田崎さん、ひょっとしたら」と振ると、田崎氏はこう応じたのだ。
「まあ、可能性はありますよね。でも、そのためにやってたとは、ちょっと僕は思いたくないですけどね。政治家になるために取材してるわけじゃないから、我々」
ふだん、政治家に取り入って代弁者として振る舞っている田崎氏が、まさか政治ジャーナリストの独立性について説教するとは……。