かれらはそもそも、この問題の背景にジャーナリズムとCMの線引きの問題があることがわかっていない。
近年、芸能人が報道番組にキャスターやコメンテーターとして多数進出したことで有耶無耶になっているが、本来、報道番組に携わる者が特定企業のCMに出演するというのは報道の公正性を損なう行為だ。実際、かつてはテレビの報道番組などに出演するキャスター、コメンテータはCMに出ないというのが不文律となっており、いまも有働由美子や羽鳥慎一はあれだけ好感度があってもCMをやっていない。
ましてや三浦瑠麗氏はタレントではなく、国際政治学者を名乗り、数多くの報道番組や情報番組に出演し、アクチュアルな政治問題や社会問題についてコメント・解説している立場だ。CM出演などは厳につつしむべきだろう。
しかし、三浦氏にはそんな倫理観はないようだ。9日に出演した『ワイドナショー』(フジテレビ)で、自身初のCM出演について問われ、「いままでは全部断ってたんですよ。(特定の)会社を宣伝するのもどうかな」などと語りながら、最後は「調査結果を無償でお出ししてるので、ビジネスモデルとして私がお金を稼がないと」とこともなげに言い放っていた。
たしかにCMに出演すればがっぽり稼げるのだろうが、しかし、それはイコール紐付きになるということである。たとえば、アマゾンプライムのCMに出て高額ギャラをもらえば、同社のブラック労働や独占禁止法違反疑惑などについて、厳しいコメントができなくなるのは自明だ。
しかも、三浦氏の場合は、ジャーナリズムのなかで発言しているだけでなく、安倍政権の政策立案にもコミットしている。本サイトでも指摘してきたとおり、2018年には安倍政権の有識者会議「安全保障と防衛力に関する懇談会」メンバーになり、つい先日も安倍首相の諮問会議「未来投資会議」の追加メンバーに選ばれているのだ。
国の政策に影響を行使するような立場にありながら、一方で「金を稼ぎたい」と特定企業のCMに出演したら、その企業を優遇するような政策を推し進めかねない。批判されるのは当たり前ではないか。