また、ネトウヨたちは総じて「SEALDsの親に会わせた宮内庁はけしからん」と、あたかも宮内庁が天皇夫妻の意向と関係なく奥田氏をキャスティングしたかのような攻撃をしているが、それもありえない。
なぜなら、現在の宮内庁は、それこそ、警察・公安人脈でガチガチに固められているからだ。
その典型が宮内庁トップである西村泰彦長官だ。西村長官は警察庁警備局長、第90代警視総監の後、内閣危機管理監を務めた公安警察官僚の重鎮。西村氏は明仁天皇・美智子皇后の時代だった2016年に宮内庁ナンバー2も次長に就任するのだが、これは、安倍首相の戦前回帰志向に批判的だった天皇夫妻の言動をコントロールしようと、やはり公安出身の杉田和博官房副長官が安倍首相に推挙して送り込んだ結果だった。実際、警察官僚の次長就任じたい22年ぶりという異例の人事だった。
その後、西村氏は宮内庁長官に昇格。宮内庁はこの西村氏と官邸の皇室担当である杉田官房副長官の公安コンビによって完全に支配された。安倍政権が公安を重用して、デモや反政権的な動きを徹底的に監視してきたことはよく知られているが、その言論弾圧体質や情報網はそのまま宮内庁にも移植されているのだ。
そんな役所の官僚が自ら積極的にSEALDsの中心人物の父親を御所に招くことを提案するはずがないし、提案があっても幹部が必ずはねつけるだろう。
「この人選には、やはり天皇陛下ご夫妻、とくに雅子皇后の意向が強く反映されているのではないでしょうか」
こう語るのは、全国紙の宮内庁担当記者だ。
「もしかすると、最初の人選じたいは今年6月から宮内庁参与に就任した政治学者の五百旗頭真さんあたりから出たかもしれません。五百旗頭さんは防衛問題などでは親米タカ派ですが、戦前の日本や先の戦争については否定的ですから。しかし、今の宮内庁の体制を考えると、五百旗頭さんが提案したとしても、絶対に官僚は拒否するはず。それが、実際に奥田さんが招かれたというのは、雅子さまが『ぜひ話を聞きたい』という意思を強く表明されたからではないでしょうか。雅子皇后はこれまで、海外志向が強いだけで、国内の社会問題に関心が薄く、保守的と言われてきましたが、社会福祉、とくに貧困と子どもの問題にはものすごく関心を持っている。積極的に社会的な活動をしてきた美智子上皇后の姿勢を受け継ぎ、上皇后がフォローしきれなかった分野にも取り組みたいという思いから、貧困や格差、子どもの問題にフォーカスされるようになったといわれています」
実際、天皇・皇后は、22日も御所に子どもの貧困問題に取り組むNPO「キッズドア」渡辺由美子理事長らを招き、ヒアリングを行なっており、貧困問題に強い問題意識を持っていることは間違いない。