だが、くわえて深刻なのは、安倍政権の“隠蔽体質”だろう。実際、妊婦・介護施設向け布マスクで不良品が見つかった際、その情報を公開するのを安倍官邸が握り潰していたからだ。
実際、「文藝春秋」7月号に掲載されているノンフィクション作家・森巧氏によるレポートでは、厚労省のマスクチームのメンバーがこう証言している。
「初めは50万枚配った妊婦用のマスクの中から、カビが生えていたり、髪の毛がはいっている不良品が見つかりました。それで『クレームが出ているので注意してください』と市町村に通知し、その上で問題のマスクを回収しようとしました。ところが、官邸から注意通知を撤回しろ、マスクの回収も必要ない、と指示が出たのです」
「実は妊婦用のマスクだけだとしていた不良品は、むしろそれ以外の1億枚の一般布マスクのほうが酷かったんです。それで官邸が、妊婦用マスクを回収すれば1億枚すべてに波及するからやめろ、となったらしい。」
その後、4月22日になって「アベノマスク」でも不良品が発見されたと厚労省は発表したが、これは前日21日に毎日新聞がネット版記事で、全戸配布用からも虫の混入やカビの付着の問題事例があると厚労省マスクチームの内部文書に記載されているにもかかわらず事実が非公表となっていることを報じたため。つまり、毎日新聞が内部文書をすっぱ抜いていなければ、虫の混入やカビの付着という国民の健康を害する恐れがある問題を隠蔽しつづけた可能性があるのだ。
国民の安全よりも体面を優先するために情報を隠蔽し、約8億円も検品にかけながらも結局、「ゴミノマスク」「ムシノマスク」を国民に送りつける──。この問題だけでも、安倍首相に新型コロナ対策の陣頭指揮をとらせることがいかに危険か、よくわかるというものだ。
今回、「アベノマスクは絶対に着用すべからず」と述べた海堂氏も、読者にこう訴えている。
〈くれぐれも、今の安倍政権の健康政策は、うのみにしないように。〉
(水井多賀子)
最終更新:2020.06.21 11:39