安倍首相も加藤厚労相も「地域にあった医療をかたちづくる」などと言うが、それよりもいまただちに必要なのは、患者の受け入れ先確保、すなわち病床の確保だ。にもかかわらず、この期に及んで医療費削減のための施策を「やっていかなきゃいけない」と言うのだ。頭がおかしいとしか言いようがないだろう。
実際、病床削減のための再編統合が必要だと政府に名指しされた病院はいま、新型コロナ対応による病床不足で切迫した状況に追い込まれている。たとえば、千葉市立青葉病院の岡崎太郎事務局長は「新型コロナへの対応で、余力がないぎりぎりの状態。ベッド数が余っているなんてことは全くありません」と現状を明かしている(東京新聞4月25日付)。だが、安倍首相も加藤厚労相も、こうした現実を無視するのだ。
また、加藤厚労相は「スケジュールは相談する」と言ったが、新型コロナの収束の目処はまるで立っていない。いや、今回の騒動によって日本がいかに医療体制が脆弱であるかがはっきりしたのだから、感染症が全国で蔓延する場合を想定した医療体制の強化、医師・看護師など医療従事者の人手不足の解消といった抜本的な改革が必要なのは言うまでもない。「地域医療構想」はそれと逆行するもので、廃止するのが当然だ。
ところが、廃止どころか「やっていく」と推進を明言するとは……。しかも、安倍首相は、新型コロナ対応で確保している病床数について、嘘をついたばかりだ。
安倍首相は2日の衆院本会議で、「ピーク時の入院患者数等は現在集計中ですが、治療のために必要な病床としては、現時点において感染症指定医療機関の病床を最大限動員し、2万5000床を超える病床を確保しております」と豪語した。
だが、これは嘘だった。東京新聞17日付の記事によると、この2万5000床という数字は、厚労省が「指定医療機関にある一般病床も含めた空きベッドの数を都道府県に報告してもらい、足し合わせた」ものだった。一方、病床数を報告した都道府県の担当者は〈国に報告した空きベッド数がそのまま「コロナ対応の病床」として計上されていることを知らなかった〉というのだ。つまり、厚労省は新型コロナ患者に対応できるベッド数ではなく、たんに空きベッド数を挙げさせ、それを足したにすぎなかったのである。そして、実際に新型コロナに対し各都道府県が確保できたとする病床の数は、この記事が出た時点で東京新聞が計算したところ、なんと計1万607床でしかなかったのだ。
この「2万5000床確保」という安倍首相の嘘は、安倍首相の「やってる感」のアピールのために厚労省が最大限の数をはじき出すべく恣意的にやったとしか考えられないものだが、安倍首相は嘘をついただけではなく、このような緊急事態の真っ最中であるにもかかわらず、国民の命を守る最前線である病院のベッド数を減らすことに執心しているのである。
国民の命・健康を守ることに注力するのではなく、むしろ地域医療を崩壊させることに税金を使う──。新型コロナという危機に晒されてもなお、人命第一の対応をとらない安倍政権。これこそが最大の「国難」なのである。
(編集部)
最終更新:2020.04.30 09:09