これもそのとおりだ。黒沢の場合はたまたま、断られても粘って何回もお願いして検査を受けたが、たいていの人は1回でも医師から「受けなくても大丈夫」「コロナではない」と言われれば自分自身の安心したいという心理も手伝って受け入れてしまうだろう。
また、黒沢は検査を受けられていなかった段階でも、自身の判断で仕事を休むという対応を取ったが、医師の「コロナではない」「検査受けなくていい」という言葉をそのまま信じて、仕事に行くなど日常生活を送っている人も少なくないだろう。その結果、本人にはまったく責任はないが、無自覚に感染を拡大してしまうことになる。
いや、すでにもうそうなってしまっているというべきか。この2ヶ月間、検査を抑制してきたことで、日本は無症状・軽症の感染者が水面下で拡大し、今頃になって感染爆発寸前の状況に追い込まれているのだ。しかも、恐ろしいのは、検査していないために、行政がその実態をまったくつかめていないことだ。
東京都では昨日4日、118人もの感染者が確認されているが、この数字は、この高い高いハードルを超えて、検査を受けられた結果、陽性が判明した人の数字にすぎない。実際は、検査を断られたり、はなから検査は受けられないと諦めている、あるいはまさか自分が感染しているとは思ってもいない潜在的な感染者が何倍もいて、いまも感染を拡大させている。
政府や行政は「若者の自覚のなさ」のせいにしているが、バービーが言うように、個人がどれだけ気をつけていても限界がある。感染を拡大させないためには、積極的に検査したうえでの隔離以外になかった。それをしてこなかったから、こんな事態が起きているのだ。
この日本の検査抑制については、海外メディアからはずっと批判されてきたが、ここに来て、アメリカ政府からも検査抑制が問題視されていたことがわかった。
アメリカ大使館が4月3日、日本に滞在するアメリカ国民に対して帰国を促すメッセージを掲載したのだが、そのなかで日本の検査不足や医療体制についてこう指摘されていた。
「広く検査をしないという日本政府の決定によって、新型コロナウイルスがどれくらい広がっているかを正確に評価することが困難になっている」
「いま我々が信頼している日本の医療システムが、新型コロナの感染増加によって、今後数週間、いかに機能するか予測することが難しくなっている」