だが、案の定というべきか、この上念氏のツイートは、まったくのデマだった。
たしかに『モーニングショー』では3月4日放送で喘息薬について取り上げたが、それは「『ダイヤモンド・プリンセス』で陽性が確認された患者に喘息の治療薬『シクレソニド』を使ったところ、3人の症状が改善に向かった」という神奈川県立足柄上病院などのグループ報告を日本感染症学会が発表した、というニュースを番組で紹介しただけ。実際、この話題は時事通信や朝日新聞、各局のニュース番組、ワイドショーなども報じていた。大谷医師はこの報告についての感想を尋ねられて、「正直、非常にびっくりいたしました」と言い、こうコメントしていた。
「私たち、喘息の患者さんには処方させていただく。そんなに強い薬じゃないんですよ。どちらかというと極めて弱い喘息の薬なんです。これが効くんだ、でしたらすごく気が楽なんですけど、本当にびっくりしました」
「まだ、ただ3例報告ですので、今後、臨床試験なりはじまると思うんですけども、希望が持てるという点では非常に嬉しかったですね」
ようするに、大谷医師は上念氏がツイートしたように「新型コロナに効く!」などとは一言も言っておらず、「まだ3例報告」と断った上で、現在医師として「希望が持てる」と感想を述べただけだったのだ。しかも、「『心配だな』というだけで使うわけにはいかない」と注意も口にしていた。
第一、この「シクレソニド」は処方箋医薬品で、医師の処方箋が必要であるため、トイレットペーパーのようにパニックが起こるような類のものではない。もし〈入手困難になりつつある〉という上念氏のツイートが事実だとしても、それは大谷医師が発言したからではなく、日本感染症学会の発表があったからだ。
しかも、じつは上念氏がこの大谷医師を批判するツイートをおこなう2日前の今月3日には、上念氏自身が「喘息薬「シクレソニド」新型コロナ効果に期待 陽性3人が快方へ」と伝えた「FNN.jpプライムオンライン」のニュース記事をリツイートし、こう投稿していたのだ。
〈まだ症例少ないので何とも言えませんが、もし本当に効くならすごい発見〉
自分も「すごい発見」とツイートしていたのに、まるで大谷医師が「新型コロナに効く」と断言したかのような虚偽のツイートをし、〈池袋大谷クリニックの大罪!〉〈喘息の子供が死んじゃうよ!〉などと攻撃する──。怒りを通り越して呆れるが、上念氏がこんな行動に出たのはもちろん、大谷医師が安倍政権の新型コロナ対応の問題点を真正面から指摘し、PCR検査の拡大を訴えてきたからだ。
上念氏が〈池袋大谷クリニックの大罪!〉とツイートした5日というのは、まさに厚労省の公式Twitterアカウントが『モーニングショー』を名指しで攻撃した日でもある。この少し前、官邸が批判報道への攻撃を指示していた。上念氏はその流れに乗っかり、デマ攻撃を仕掛けたのではないか。
実際、上念氏はこのツイート以前から〈池袋大谷クリニックのデマ実例。みんな気をつけろよ!〉〈池袋大谷クリニック、医療事故起こしかねないずさんな感染症管理がバレました〉などと投稿していただけでなく、5日には厚労省のデマ反論ツイートを1時間も経たないうちにリツイートし、こう煽っていた。
〈テレビの中の人は池袋大谷クリニックとか上昌広とか岡田晴恵にテキトーなコメントさせちゃダメだよ。
厚労省がテレ朝のあの番組名指しでやんわり反論し始めました。これどんどんやった方がいいと思う。
ついでにBPOにも通報してくれ。私も頑張って抗議電話かけよう。〉
BPOに通報しよう、自分も抗議電話をかける──。こうした煽り行為とデマ攻撃によって電凸が増え、診療に支障をきたし、『モーニングショー』への出演見合わせにつながったとすれば、これは名誉毀損、営業妨害にあたる可能性もあるのではないか。