新型コロナの感染が疑われながらも検査を受けさせてもらえないという声がここまで高まっているというのに、いまだに何ら手立てを打たない政府──。しかも、その検査拡大を渋る理由も無茶苦茶だ。
加藤勝信厚労相は17日の会見で、18日以降は1日3830件のPCR検査が可能だと述べていたが、実態はPCR検査の実施数は25日12時時点で、たったののべ1017人だ(チャーター便帰国者やクルーズ船乗船者をのぞく)。なぜこんなに少ないのかを昨日25日の衆院予算委員会分科会で問われた加藤厚労相は、この数字には感染が確認された人の濃厚接触者への検査実施数が含まれていないと説明し、総数を数字で示してほしいと求められても「正直言って(地方衛生研究所から)全部即日(報告が)上がってきているわけではない」と答弁。さらに民間検査会社を活用すれば1日万単位の検査が可能になるとも言われているが、民間の活用をこう渋ったのだ。
「(民間と公的機関の)役割分担をどういうかたちでしていくのかを整理せずにやると、これは逆に混乱を生むんじゃないのか。私の懸念は最大そこ」
いまだに役割分担の整理もできていないって、一体いままで何をやってきたんだと言いたくなるが、その上、昨日の分科会では、中国から国立感染症研究所に対して無償提供された1万2500人分のPCR検査キットが、性能的にも問題ないと同研究所から厚労省にも報告されているというのに活かされていないことが判明。加藤厚労相は「もともとある供給力と調整していきたい」などと答弁したが、感染拡大地である中国からの善意さえ無駄にしようとしているのである。
しかも、加藤厚労相は昨日、ようやく検査の保険適用に言及したが、これもじつは「保険適用に向けて準備を進める」というだけ。一刻も早くPCR検査を保険適用にし、民間の医療機関で検査がおこなえるようにすべきなのに、加藤厚労相は「(民間医療機関などで)どんどん引き受けてもらえる状況ができれば(適用を)考えていい」などと述べたのだ。
こうした加藤厚労相の態度や基本方針を見るかぎり、本サイトで言及してきたように、政府は「感染者の数字」を増やしたくないために、あえて検査を拡大させないようにしているとしか考えられない。昨日放送された『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)では、新型コロナの感染が疑われる症状でありながら、この期に及んで渡航歴や感染者との接触歴の有無によって検査を断られたケースが紹介されたあと、池袋大谷クリニックの大谷義夫院長は「医者人生30年間、今回ほど怖いことはない。検査できない。検査できないから診断できない。診断できないから治療もできない。何もはじまらない」と危機感をあらわにしたが、こうした状況を政府は自己保身のために野放しにしているのである。