さらに、普段は田崎氏にまる乗っかりするMCの恵俊彰すら、山本医師の指摘を受けて「本当にそういう(検査ができる)日本になってるんだったら『わかりましたコロナ調べましょうか』ってなればいいですけど、いまできないわけじゃないですか」「この方は氷山の一角で、ひょっとしたらこういう人たちは何人もいるかもしれない。一週間前の日本はこうだったってことなんですよ、現実はね」と反論した。すると田崎氏は、今度は攻撃対象を70代の女性個人に切替えたのである。
「38度って言いましたっけ。よく38度の熱が出て旅行に行くなあって思いますよ、僕は」
“町のお医者さん”に責任をすり替えたと思ったら、次は、よりにもよって新型コロナウイルス に感染してしまった人を非難する。呆れてしまうが、これも恵が「そこは置いておきましょうよ、行けたんだから。でも具合が悪いから、あれおかしいなって。結局調べて、二つ、三つ(の医療機関を受診して)でたどり着くわけです。こういう例が他にもあるかもしれない」と反論していたように、明らかに破綻した“自己責任論”だ。
実際、この女性のケースを見れば、当初、他の人に感染の恐れがあるインフルエンザを自分で疑って医療機関へ行っている。そのとき、新型コロナであることがわからなかったのは、繰り返すが、国の検査体制の問題であって、間違っても当人の責任ではない。
さらに言えば、田崎氏は「高熱なら旅行に行くな」と説教しているが、旅行じゃなく仕事などに行くケースもあるだろう。それがどれだけ難しいことか、田崎氏はわかっているのか。たとえば厚労省は、17日に新型コロナウイルスに関する相談や受診の目安を示した際、「発熱など風邪の症状がある時は学校や会社を休んでください」と呼びかけたが、新型コロナウイルス陽性の診断を受ける前に自主判断で会社を休んだ場合、賃金の補償は必ずしもなされない。
本サイトでも指摘したように、厚労省がHPに掲載している「新型コロナウイルスに関する事業者・職場のQ&A」(企業の方向け)の2月13日時点版では、「労働者が新型コロナウイルスに感染したため休業させる場合、休業手当はどのようにすべきですか」という問いに対して、政府は〈新型コロナウイルスに感染しており、都道府県知事が行う就業制限により労働者が休業する場合は、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しないと考えられますので、休業手当を支払う必要はありません〉と答えていた。更新された21日時点版でも、「労働者が発熱などの症状があるため自主的に休んでいます。休業手当の支払いは必要ですか」という問いについてこう答えている。
〈会社を休んでいただくよう呼びかけをさせていただいているところですが、新型コロナウイルスかどうか分からない時点で、発熱などの症状があるため労働者が自主的に休まれる場合は、通常の病欠と同様に取り扱っていただき、病気休暇制度を活用することなどが考えられます。〉
ようするに、今になっても政府は、自主的に休む場合は「通常の病欠」と同じ扱いにせよと言っているのだ。つまり、無給か有給休暇をとれというのである。これで「会社を休んでいただくよう呼びかけをさせていただいている」などと言うのだから、無茶苦茶にもほどがあるが、田崎氏は「熱があるのだからコロナを疑って外出するな」というふうに言うことで、こうした政府の酷い対応を隠してしまっているのだ。