本サイトはかなり早い段階から、クルーズ船での隔離とずさんな対応を指摘し、「船内感染を拡大させるだけだ」と批判してきたが、実態は予想以上、戦慄すべきひどさだったというわけだ。
しかし、岩田氏はダイヤモンド・プリンセスの内情を暴露するために、船内に入ったわけではない。こうした問題を船内できちんと指摘し、改善するよう、DMAT(災害派遣医療チーム)や厚労省幹部に提案していた。
そもそも、岩田氏がダイヤモンド・プリンセスに乗船しようとしたのは、前から感染症対策がうまくいっていないんじゃないかという懸念を持っていたところに、船内にいる人間から「怖い」と、「感染が広がっていくんじゃないか」という助けを求めるメッセージをもらったためだった。そこで、厚労省の知人と交渉し、DMATの一員、臨時の検疫官として入ることになった。
そして、初日にここまで書いてきたような状況を把握し、感染症対策の改善を船内にいる「厚労省のトップ」に相談。夕方のDMATのカンファレンスでも提言したいと申し出ていた。
ところが、岩田氏によるとその「厚労省のトップ」は、「ものすごく嫌な顔されて、聞く耳持つ気ない」「なんでお前がこんなとこにいるんだ」「なんでお前がそんなこと言うんだ」という態度。そして、いきなり、たった1日で、ダイヤモンド・プリンセスを追い出されてしまったのである。
岩田氏は、同じくYouTube動画のなかでこう証言している。
「突如として夕方5時ぐらいに電話がかかってきて『お前は出ていきなさい』と検疫の許可は与えない、まあ、臨時の検疫官として入ってたんですけど、その許可を取り消すということで資格を取られて」
「とにかく岩田に対してすごいムカついた人がいると、誰とは言えないけどムカついたと、だからもうお前はもう出ていくしかないんだって話をされました」
なんとせっかく感染症の専門家が建設的な提案をしたと言うのに、提案を受けた「厚労省トップ」は聞く耳を持たず、逆に「ムカついた」という理由で追い出してしまったのである。