そんなほんこんは今年、ちゃっかり本まで出している。『日本のミカタ ボク、この国のことを愛しているだけやで!』(ワニブックス)なる新書だ。最後まで読んだ上で言うが、これまた中身がスカスカすぎて論評する気も失せる。
たとえば、ほんこんは〈別に過激でもなんでもないし、当たり前なこと言うてるだけ。ただ、誰も「おかしいことをおかしい」と言わないせいか、ボクのこうした発言がネットやSNSで注目されて、ボクのことを「ネトウヨだ」「安倍シンパだ」と攻撃する人も増えてきました〉などと被害者ヅラし、〈ネトウヨが、芸名で「ほんこん」なんて外国の地名、名乗るかい! 本当にネトウヨなら「せんかく」とか「えとろふ」にでも改名するわって話や(笑)〉などと書いている。
(笑)って、いや、死ぬほどサムいが、さらに読み進めていくと、その無自覚な“ネトウヨ的薄っぺらさ”に本気の寒さを覚えること必至だ。
〈でも、ま、「保守」なら「保守」でいいのかなと思いますけどね。だって、この国に住んでんねんから!
それが違うという人らは、何らかの理由でこの国を貶めようと思ってる方々なんでしょうか。もしかしたら、戦後の自虐史観をすり込まれた可哀そうな人たちかもしれないですけど、やってることは結果的に他国を利することばかりでしょ。〉(『日本のミカタ』)
あえて、ほんこんの特徴をあげるとすれば、こうした言論の“オリジナリティのなさ”かもしれない。たとえば〈あくまでも民主主義ではあるんですけど、ある程度強引なこともしなければ国を動かすのは難しいので、ゆる〜い独裁国家がいいなと個人的には思っています〉などと書いているのだが、コレ、同じ吉本の小籔千豊がテレビ番組で「僕はライト独裁(がいい)」「民主主義独裁です」などと主張していたものとほぼ同じ話(参考https://lite-ra.com/2015/10/post-1578.html)。まったく、なんだかなーって感じである。
もうひとつの特徴は、すでに読者諸賢もお気づきだろう。とにかく議論が雑であることだ。本人は「安倍応援団」であることも否定するが、リベラル系の野党を叩き、現政権を擁護するのが基本路線。とりわけ、安倍首相を褒めるときの表現の雑さは笑えるレベルである。
〈ふたりが仲良くする、あの絵がすごい効果を生んでるんですよ。ふたありで一緒にゴルフをやってる、一緒に食事をしてる、一緒に護衛艦「かが」に乗ってる……これが全部、世界へのメッセージ。つまり、中国、ロシア、北朝鮮に対する抑止力になるんです。〉(『日本のミカタ』)
ところが、こうした雑さが、かえってネトウヨに受けているらしい。ほんこんがネトウヨや極右界隈で注目され始めたのは、著書のタイトルにもサンプリングされている関西ローカル番組『教えて!ニュースライブ 正義のミカタ』(朝日放送)への出演からだ。この番組でほんこんは、韓国や北朝鮮批判、野党バッシングなどを繰り返してきた。そのたびにSNSでは、ネトウヨたちが「ほんこんよく言った」「ほんこん無双!」などと快哉を叫んでいるという始末である。