このあと、番組は恵の「さあ、菅官房長官、いま追い込まれているのか、実はそうではないのか。そこらへんをちょっと見ていきましょうかね」というフリで、次のテーマに映るのだが、これまた唖然とする展開だった。
菅官房長官が追い込まれているというのがテーマのはずが、蓮見孝之アナが紹介したパネルには「“令和おじさん”からポスト安倍へ“鉄壁官房長官”」なるタイトル。しかも、蓮見アナは、「菅官房長官は1948年に秋田県で農家の長男として生まれました。集団就職で上京し、段ボール工場に就職したそうです。また1973年、学費を稼ぎながら法政大学法学部を卒業、一度民間企業に就職するんですが……」と、菅官房長官の立志伝を滔々と述べたあと、4月に地方で応援演説した際のVTRを流しながら、“令和おじさん”としてのブレイク、人気をこう紹介したのだ。
「聴衆がおよそ1000人にまで膨れ上がりまして、菅さんの歩くところには人だかりができて、もみくちゃになっています。そして女性たちからも黄色い声があがりました。車の窓を開けて手を振っていました」
まるで菅官房長官のプロモーション番組だが、この流れにさらに乗っかろうとしたのがやはり恵だった。VTRが終わると、恵は三田寛子にこう話をふったのである。
「三田さんが言ってたんでしたっけ? 安定感があるとか、安心感があるって」
三田はそんなことまったく言っていないのだが、恵はどうしても「安心感がある」という褒め言葉を引き出したかったらしい。しかし、三田は今回も恵の希望には応えず「なんかそういうときもあったり、そうじゃないときもあったり」と苦笑しただけ。すると、恵はその発言をまったく無視して、「いや、でも縁の下の力持ち、支える方っていうイメージですけど、表に出てこられた1年だった」「ポスト安倍のなかに必ず名前があがる人になってきた」と持ち上げ始めた。
さらに、八代弁護士が、総務大臣時代の菅官房長官が非常に怖かったらしいという話や、現役で空手をやっているというエピソードを紹介すると、恵は「怖いという話なんですか? 安心感があるんですか?」と、またもや“安心感”をもちだしたのである。
その強引さは、誰かに「菅官房長官は安心感があると宣伝せよ」と指令を受けているとしか思えないほどだった。
その後も、恵と『ひるおび!』の菅擁護・礼賛は続く。今度は「歴代官房長官のなかでも屈指の情報収集能力で、どんな質問にも完璧に答えることができる」というコメントをボードで紹介し、会見VTRを流すのだが、そこでクローズアップされたのは、菅が持っている資料に貼られた付箋だった。
「様々なキーワードが付箋に書かれていて記者から質問があったときにはさっとページをめくって答える」などと、菅がいかに周到に準備をして会見に臨んでいるか、を称賛し始めたのだ。
ただ、ここでも菅を手放しで礼賛しようとしたのは、番組制作サイドと恵だけだった。
恵が「どんな質問が来るかわからないから、それに対して備えるだけ備えるってことでしょう」と菅のことを大げさに感心してみせ、「原田さん、いかがですか、すごいですね」と原田氏にコメント求めたのだが、原田氏から返ってきたコメントは、「その脇のかたさをもってしても上手く立ち振る舞えないくらい、かなりレベルの低いことが起こってしまってるってことですね」という真っ当な指摘。
そこで、今度は三田に「これだけのことを用意してるって、三田さん」と話を振るのだが、三田からも「ようするにこういう問題で、これだけボロが出てくるって、政府には、もっともっと私たちには知らない、すごいことがあるんじゃないかって逆に、すごい政治不信にならないかなと心配になりますね」と、逆に疑問を呈される展開になってしまった。
しかし、それでも恵はめげない。こうした批判に一切同調しなかったのはもちろん、「ボロが出たっておっしゃいましたが、本当にボロなのか、慎重なのか。どっちなのか」と反論したのだ。