「総理大臣夫人」という肩書をお友だちのためにフル活用し、公的イベントでも招待枠を持つ……。これの一体どこが「私人」だという話だが、しかし、昭恵氏の公私混同はこれだけにとどまらない。
たとえば、昭恵氏が一緒に明治天皇陵を訪れ教育勅語を朗唱するなどの“スピリチュアル仲間”というような関係にある赤塚高仁氏という人物がいる。この赤塚氏はオカルト偽史である「日ユ同祖論」本の著者でもあり、その著書を読んだ昭恵氏が2015年にアプローチし、急速に親しい関係に。もちろん、2017年の「桜を見る会」に赤塚氏が招待され、さらに2016年には公邸西階段で一緒に写真を撮っている。
功労者をねぎらう「桜を見る会」に、教育勅語を一緒に朗唱する“スピ友”を招待し、やっぱり公邸で写真を撮る……。だが、もっと重要なのは、この赤塚氏が2015年6月5日付のブログで、伊勢志摩サミットの開催地決定について事前に昭恵氏から聞かされていたと綴っていたことだ。
〈正月の3日、安倍昭恵さんとお会いしてからずっと祈って来た伊勢志摩サミット。
昨日の午後、安倍総理から正式決定の発表がありました。
嬉しいです。(中略)
発表の前日に昭恵さんから
「わたしは、首脳たちの夫人を伊勢神宮にお連れします。
会議や話し合いで変わらないものが、きっと感じることでわかること、あると思うの
男たちに変えられないもの、女性ならできることあるわ」
と、聞かされていたので
きっと伊勢に決まるのだな・・・と思いましたが、昭恵さん天晴れです!〉
この伊勢志摩サミット開催決定については、森友学園の籠池諄子氏も発表7時間前に「昭恵さんから電話があって、賢島(伊勢志摩)でサミットをやることが決まった!」と話していたという疑惑が浮上したが、昭恵氏はこのように自分のお友だちを「桜を見る会」に招待するだけではなく、政府の重要発表まで事前に漏らしていたのである。
驚愕の「私人」による政治の私物化……。恐ろしいのは、その大きさだろう。しんぶん赤旗日曜版12月1日号では、昭恵氏がらみの「桜を見る会」招待者をネット調査。すると、昭恵氏は名誉会長を務めたスキーイベントや昭恵氏が校長を務める「UZUの学校」、昭恵氏がつくったマラソンチーム「TEAM A」などの関係者らが十数人単位で「桜を見る会」に招待されていたことが判明。2013〜19年のあいだで「昭恵枠」で招待された可能性がある人は累計143人にのぼることがわかったのだ。
無論、これはSNSの投稿などから分析した結果であって、氷山の一角にすぎない。赤旗の取材では2017年に地域活動の交流イベント後の懇談会で昭恵氏と名刺交換をしただけの人物が、その後、毎年招待状が届いていることを明かしているように、昭恵氏は幅広く招待状をばらまいていただろうことは想像に容易いからだ。
安倍首相と菅義偉官房長官は「総理・昭恵枠」を約1000人と答弁しているが、安倍首相が約800人も地元からツアーを組んで招待し、昭恵氏はこうして贔屓のV系ミュージシャンから名刺交換をしただけの人まで広く招待状を送っているのに、果たして約1000人でおさまるものなのか。疑問は膨らむばかりだろう。
しかも、こうした昭恵氏の公私混同が甚だしい傍若無人な振る舞いを、「またか」などと看過することはできない。というのも、昭恵氏の人脈は安倍首相にもつながるものだからだ。