さらに、今回のバイト募集をめぐっては、もうひとつ不可解なことがある。バイト募集について「ボランティアが足りてなかったのか?」との声が上がっているが、実態はまったく逆ということだ。
組織委は、8万人を目標にボランティアを募集し、その2.5倍にあたる20万4680人もの応募者があったと今年1月に発表していた。ところが今年10月はじめに、組織委は、面談などの結果、応募の半分を超える12万人を不採用にしたと明らかにしたのだ。10月に12万人の不採用を発表したばかりなのに、その直後に有償アルバイトを募集しているということになる。
ようは、この不採用の12万人の「人材」があまっているわけで、どうして、いまこのタイミングで、あらためて有償アルバイトを募集しなければならないのか。
しかも、無償ボランティアについては当初から待遇の“ブラック”ぶりが指摘されてきた。対策が不十分な「酷暑」の問題はもちろん、全国から集まるにもかかわらず、支給される「交通費」は一律、1日たったの1000円相当のプリペイドカードで、宿泊も各自で負担しなければならない。さらには通訳や医療関係などの専門性の高い業務さえ無償のボランティアに任せるという体制は、まさに「東京五輪で一丸となろう!」を合言葉にした“やりがい搾取”だ。
組織委の回答によれば、有償バイトは2000名の募集だという。わざわざ派遣会社を通して有償バイトを新たに募集するのであれば、不採用の12万人から人員を補充しボランティア全体の待遇を改善するという予算の使い方もありえるだろう。
いずれにしても、ボランティアでは人員が足りなくなったための緊急募集というのは考えづらい。どう考えても、最初から有償アルバイトの枠があってボランティアの多寡にかかわらず募集するつもりだったとしか思えない。
実際、有償アルバイトの募集はもともと予定されたものだったのかとの質問に、組織委は〈職務を遂行していただく必要な期間やコストとのバランスを考慮して適切なタイミングで募集をかけることとを予定しておりました〉と有償バイト募集が予定されたものだったことを認めている。
とすれば、無償ボランティアの研修も始まった後、実質同じような業務を、今度は有償バイトとして募集するという方法は、大きな問題がある。組織委はボランティアについて〈任意かつ無償で参加いただくことを前提〉と説明しているが、同じような業務に「時給1600円」と「無償」があるとわかったうえで無償ボランティアを選んで応募したわけではない。知っていたら有償バイトで参加したかったという人がいてもおかしくない。騙し討ちのような募集方法については、きちんと検証されるべきだろう。