こうしてみると、新原氏はまさに、安倍政治を象徴している存在と言っていいだろう。周知のように、安倍政権は、担当省庁から権限を奪い、息のかかった官僚たちを内閣官房や内閣に設ける省庁横断の会議などに集めることで、その政策を強行に進めるかたちを定着させた。政策ごとに特別対策チームをつくり、側近官僚が強引に政策を推し進め、問題が出てきても総理の威光によって官邸官僚たちはその責任が問われることはない──。こうやって問題ばかりが噴出する安倍独裁はつくり上げられてしまったわけだが、新原氏はその共犯者である官邸官僚の代表的存在なのだ。
しかし、だとしたら、気になるのは結婚を決めた菊池の姿勢とのギャップだろう。新原氏が出会ったのは、菊池が「1億総活躍国民会議」に有識者として民間議員に選ばれたことがきっかけだったと言われているが、本サイトでも報じたように、この会合で菊池は「1億総活躍」というネーミングに疑義を呈し、社会から排除される人をつくらないという「ソーシャル・インクルージョン」の考え方を紹介し、会合後には記者団に対して「今、排除されているであろうと思われる方々を全て見渡して救っていくことを、あらゆる視点から、今日各大臣がご参加いただきましたので、考えていただきたいと、そのように申し上げました」(産経ニュース2015年10月30日付)と述べていた。
既報のとおり(https://lite-ra.com/2015/12/post-1793.html)、菊池は2001年に生まれた第2子の長女が乳児期に脳梗塞を発症したことをきっかけに2009年に法政大学大学院に進学、「子どもたちのキャリア形成をとりまく社会構造に疑問と問題意識」を持ち、ハンディキャップのある子もない子も同じように夢がもてるような教育を目指して活動をおこなってきた人物であり、政府の会議でも忖度することなく、社会的弱者を冷遇する安倍政権にダメ出しをしたのだ。
だが、伴侶に選んだ新原氏は、前述したように、消費増税対策、幼児教育・保育の無償化、働き方改革、全世代型社会保障と、仕切った政策はいずれも社会的弱者を救済するように見せかけてその実態は格差拡大を助長したり、弱者切り捨ての政策ばかり。実際、自民党のベテラン厚労族議員も「新原は社会保障に興味はない」と断言している(読売新聞10月1日付)。
しかも、今回の結婚発表に対し、安倍官邸に近い自民党議員たちはさっそく“身内のおめでた”と言わんばかりに大騒ぎ。世耕弘成・前経産相は〈新原局長おめでとうございます! 一緒に仕事をしてきましたが、どんな難題にも明るく前向きにチャレンジする極めて優秀な方です〉と投稿し、甘利明・元経産相も〈土曜日に経産省の新原局長から電話がありました。「じつは、女優の菊池桃子さんと結婚することになりました。月曜に彼女がブログで発表しますので」「えーーっ」我等のアイドルが野蛮人(笑)の手に まっ、みんなに夢と希望を与えるからいっか。おめでとー #甘利からです〉とツイートしている。
この調子だと、菊池の結婚が安倍政権に政治利用される日も近そうだが、はたしてどうなってしまうのか。不安を覚えずにはいられない。
(編集部)
最終更新:2019.11.05 09:09