八木誠会長、岩根茂樹社長ら幹部たちが金品を!(関西電力HPより)
原発利権をめぐる深い闇の一端がとうとうあらわになった。関西電力の八木誠会長ら幹部20人が、高浜原発のある福井県高浜町の森山栄治・元助役(今年3月死去)から過去7年(2011~17年)にわたり総額3億2千万円相当の金品を受け取っていたことが金沢国税局の税務調査で判明したのだ。
しかも、森山氏に資金提供していたのは、原発関連工事を請け負う高浜町の建設会社だった。ようするに、3億2千万円は関電の利用者から徴収した電気料金を原資とする原発発注工事費。その一部が発注者である関電幹部の元に回り回って還流したのだから、これはれっきとした背任行為だろう。
それにしても、電力会社の不正はタブーといわれるなか、なぜこんな大スキャンダルが明らかになったのか。大手紙社会部記者が報道のいきさつを解説する。
「原発利権の取りまとめ役で、“影の町長”といわれていた森山氏の存在は以前から有名だったんですが、その森山氏が90歳で亡くなった3月、マスコミに森山氏から幹部への裏金提供をめぐるたれ込みが相次ぎ、各社とも取材に動いていたんです。ところが、どこも単独では書けず、報道できなかった。一方で、金沢国税局が昨年のうちから存命中の森山氏を追及、裏金を受け取った関電幹部たちに修正申告をさせていたんですね。それで、ここにきて、国税局から共同通信が情報を得て、『税務調査で判明』という形で先行報道。その後、各社が後追いして一斉報道となったわけです」
当局が動かないと、何も書けないマスコミの体質がまたぞろあらわになったとも言えるが、もっとひどいのは関電の隠蔽体質だ。
金沢国税局は昨年1月、原発関連工事を請け負う高浜町の建設会社「吉田開発」の調査を行い、工事受注に絡む手数料として森山氏へ約3億円がわたったことをつかんだ。さらに森山氏を調べ、関電幹部に金品が流れた事実を突き止めたという。前出の社会部記者が続ける。
「森山氏は1977~87年に助役を務めました。この間、高浜原発の3~4号機建設誘致の推進役となり、関電と深い仲になったようです。退職後も、地元業者のとりまとめ役になり、町長をしのぐ隠然たる力を持つようになりました。関電との取引が今後も続くように金品を送り、抜き差しならぬ関係を築いたようです」
実際、生前の森山氏は国税局に対して「関電にはお世話になっている」と金品提供の趣旨を説明したという。
すると、こうした国税局の動きを受けて、関西電力の役員らが慌てて修正申告。記者発表も社内調査もせずに、この修正申告だけで幕引きをさせようとしていたのだ。
「関電は国税幹部に働きかけて、この事実を公表しないように要請していたという話もある。しかし、関電の反省のない姿勢に国税局の現場が怒って、マスコミに情報を流したということのようです」(前出・社会部記者)
しかも、関電はこの期に及んでなお、事実を明らかにしていない。記者会見した岩根茂樹社長は27日の記者会見で「常識の範囲を超える金品は受け取りを拒んだり、返却を試みたりしたが、強く拒絶された」などと釈明に終始したが、両者の関係はそんなものではなかった。
関電が社内調査に基づいて明らかにした「20人で計3億2千万円」は2011年以降に限定して発表したものだったことが分かったのだ。
八木会長は「2006~10年に受領した」と報道機関に証言している。そもそも金品を提供した森山氏は助役を1987年に辞めており、亡くなるまでに30年以上の期間がある。明らかになっていない金品提供があり、実際は受領者数と受領総額がもっと大きいのは確実だろう。一説にはその数倍に及ぶのではないかという見方もある。