安倍政権下で非正規雇用が増加し、実質賃金が減る一方で、企業は法人税の引き下げといった優遇を受け、内部留保は過去最高を更新しつづける──。消費増税というのは法人税を減税した分の穴埋めでしかないと指摘されているが、所得格差が改善せず高水準で横ばい状態のいま、よりにもよって低所得者ほど負担が大きくなる消費税を増税すれば、格差拡大はより深刻な問題になってゆくだろう。
しかし、テレビはそもそも消費税の使途や、現在の経済状況で増税が実施されれば国民生活にどれほどの打撃を与えるかといった問題を掘り下げることもせず、前述したように「お得に買物ができるプレミアム付き商品券を活用しよう」だの「キャッシュレス・ポイント還元をおさらい」だのといった報道に終始している。本サイトは昨日の記事で、安倍政権がプレミアム商品券とポイント還元制度に74億円の「広報・宣伝費」をつぎ込んでいたことを指摘したが、この金がテレビに回っている結果ではないか、と疑いたくなるほどだ。新聞にしても同様だ。軽減税率の対象となったことで筆を完全に鈍らせ、消費増税をおこなうことの危険性を問い直すこともしない。
こうした「消費増税は決定事項・不可避」という大前提に立った報道によって、国民も「仕方がないこと」だと擦り込まれ、景気が悪化していると示されても増税実施に大きな批判も起こらず、ついにここまできてしまった。まさしく安倍政権とメディアが一体となって正当化し、反対の声が大きくなることを封じ込めたのだ。
そして、大手新聞が「増税に勝つ食べ切り術」「消費増税に節約で勝つ」などと書き立て、生活の苦しさは自分の工夫で乗り切れと追い打ちをかける──。国民に痛みを押し付けようとしているという意味では、安倍政権もメディアも同罪なのである。
(編集部)
最終更新:2019.09.25 08:09