今回の『ゴゴスマ』での武田・東国原のヘイト発言の背景について、実際にそうした指示があったかどうかはわからないとしたうえで、そういう下地があることが暴走を生んでいるのではないか、と玉川は分析したのだ。
これに対して室井は「でもけしかけられてだよ、あたし、ないけど、けしかけられたことって、女優じゃないのにできる?」と疑問を呈し、大竹まことも「それはバラエティでしょ。バラエティだったら大竹さん、ちょっとヒールお願いしますよ、わかりました。やりますよ、いつもより厳しめにヒールを、って。バラエティだよ、それ」「けしかけられたとしてもさ、そういうふうに自分が思われるわけでしょ。その人が。それはその人の全能というか全方向性を自分で否定してることになるじゃない」と、にわかには信じがたいというような反応を見せていた。
たしかに自分がまったく思っていないことや真逆のことを、番組側の明確な指示により俳優のように演じるというのは、陰謀論めいているところもあり想像しづらいだろう。
また、今回の『ゴゴスマ』に関しては、そもそも武田教授はヘイト番組の常連だし、東国原もミソジニー発言が散見される人物。両氏の今回のヘイト暴言は、番組の指示があったからというより、本人たちの思想や感情・生理の表出であることは明らかだろう。
しかし、明確な指示などはなくとも、玉川が指摘したとおり、武田・東国原ヘイト発言の背景に、現在のワイドショーが暴走を許している、煽っている構造があることは、間違いない。
思ってもいないことを言ったり、演じたりはしていなくとも、たとえば、本当は思っていることを言わない、両論併記ふうなエクスキューズを付けて発言する、自分の意見ではなく他人の意見の伝聞として語る、といった方法で発言の強弱を調整しているコメンテーターはいくらでもいるだろう。
実際、「韓国に厳しいことを言ってください」と言われたことがあると玉川に明かしたコメンテーターも、「事実だけを述べて、なんとかそれを回避する」と話していたという。
しかしそのときに取捨選択されている事実というのは、韓国を批判するための事実であって、たとえば「輸出管理に関して国際機関から日本も問題を指摘されている」とか、「個人請求権は消滅していないと日本政府も認識を示してきた」とか、「対韓国輸出規制が参院選にぶつけて実施された」とか「輸出規制は徴用工判決に対する報復措置であると安倍首相みずから発言している」とか「日本軍『慰安婦』が存在し人権を蹂躙されたことは事実」「安倍首相は歴史修正主義者である」といった、日本政府に都合の悪い事実や日本による植民地支配や加害責任を認めるような事実は含まれていないだろう。