ようするに橋下氏は“憲法審査会を無理矢理やってしまえばいい”と言っているわけだが、つまるところ、安倍首相がカメラの前で言えないグロテスクな本音を、橋下氏が“代弁”しているということだろう。
実際、安倍首相は橋下氏の発言を受け、待っていましたとばかりに誘導を進めていった。「共産党は議論すらしないという姿勢をほぼ明らかにしています」「それでは国会議員としての職責果たせない」「この選挙の結果を受けて、野党のみなさんにも真摯に対応していただきたい」とまくしたてたかと思えば、すぐさま橋下氏が「共産党と同じく立憲民主党も安倍政権中には議論しないと言っている」「立憲民主党もある意味、職務放棄と見なして、同意がなくても憲法調査会を進めていくということですか」と畳み掛ける。息をぴたりと合わせて補完しあいながら、「改憲議論をしない野党はおかしい」という印象操作をしかけていったのだ。
さらに橋下氏は、MCの宮根誠司らからの安倍首相への質問が終わると、最後にまた「憲法改正の衆議院の憲法調査会、これはどうしても共産党と立憲民主党が議論に応じないというのであれば、国民民主党や維新やら、自民党、公明党、ここで、きちっと多数で憲法調査会を動かしていただきたいと思います」とダメ押し。結局、橋下氏が「圧勝」を印象付けながら改憲を煽りに煽りまくって、フジの安倍首相の出演は終わったのである。
“与党と維新ら改憲戦力だけで憲法審査会を開いてしまえ”と言う橋下氏と、またぞろ立憲民主党や共産党ディスを繰り出す安倍首相——。自分たちに反対する政党を“敵”に仕立て上げ、力づくで願望を押し通そうとするその姿は、まさに民主主義を破壊する“独裁者コンビ”と呼ぶしかあるまい。
しかも、フジの選挙特番では、この安倍・橋下コンビのやりたい放題に対して、他の出演者が一切止めようとしなかった。いや、フジだけではない。他局の選挙特番でも、やはり安倍首相に直接「改憲論議を押し進めることは民意無視だ」と指摘する者はほとんどおらず、ただただ“改憲の意気込み”をフリーで語らせるような番組ばかりだった。
唯一の例外はテレビ東京の『TXN選挙SP 池上彰の参院選ライブ』で、MCの池上が「改憲勢力を確保できるかはかなり微妙」と安倍首相にふって、「そもそも憲法改正すべきだと仰っている以上、選挙で3分の2を確保するということが本来やらなければいけない責務だったのでは」と、至極当然のツッコミをしたぐらいだろう。