当然ながら、これについては、韓国も反論している。産業通商資源省の朴泰晟・貿易投資室長は11日の記者会見で、「韓国の戦略物資が北朝鮮を含む国連安保理決議による制裁対象国に流出した事例はない」として、「米国の摘発件数はさらに多い。摘発件数が多いことを理由に輸出管理制度への疑念を唱えるなら、もっと多い米国も信頼できないということになる」と主張した(毎日新聞7月12日付)。
たしかに韓国の言う通りだ。不正を「摘発」したことが「輸出規制」の根拠になるというなら、米国はもちろん、日本だって同罪になる。それどころか、韓国政府は現在、対抗措置として日韓両国の輸出管理違反について国際機関による調査を求めているが、そんななか、国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会専門家パネルで、この数年の間に日本が制裁対象や軍事転用可能な品目を複数、北朝鮮に輸出していたことが報告されていることを、韓国の聯合ニュースが報じている。
「北朝鮮への横流し」については、輸出規制を打ち出した当の経産省関係者も冷ややかにこう語る。
「“横流し”疑惑は、官邸から“徴用工の報復のために何かいい方法はないのか”といわれて、経産省幹部がずっと前からいわれている問題を無理やり引っ張り出してきただけ。いまさらだし、内部でもけっこう“無理筋”じゃないかという意見が多かった。たしかに、韓国への輸出品が北朝鮮に流れている疑惑はあるが、確たる証拠はないし、他の国でも同様の不正事件は起きている。このままじゃWTOで負ける可能性もある。経産省は官邸に言われてこぶしをふりあげたものの、頭を抱えていて、いま頃になって『証拠を探せ』と関係部署に号令をかけているようだ」
実際、日本政府はいまも「韓国政府の輸出管理に不適切な事案があった」というだけで、いったい何が「不適切な事案」であるかの詳細については公表していない。本当に「北朝鮮への横流し」が問題ならその決定的証拠を公表すればいいだけの話。それができないというのは、いまの段階でもなお、具体的な証拠を全くつかめていないということではないか。
それどころか、ここにきて経産省自ら韓国に対して「北朝鮮への横流し」を否定する事態に追い込まれている。12日に日本で日韓の実務者会合が行われたが、産経新聞(7月13日)によれば、日本側の経産省担当者が「不適切な事案」について「第三国への横流しを意味するものではない」と説明したという。
これは、その少し前、韓国サイドから「(北朝鮮への横流しについて)韓国は国際機関の検証を受ける用意がある」という反論を受けたためだ。自分たちで情報を流しながら、韓国に「国際機関で決着をつけよう」と言われため、慌てて火消しに走ったのである。
世耕弘成経産相も同様で、16日の会見では国際機関を通じた解決について聞かれ、「国際機関のチェックを受けるような性質のものではまったくない」と完全に逃げ腰になっている。