テレビ朝日『羽鳥慎一モーニングショー』番組サイトより
投開票まで一週間を切った参院選。この選挙で安倍首相が争点に掲げているのが、憲法改正だ。演説などでは「憲法のあるべき姿について議論するのかしないのかを問うのが、この参院選」などと吠えている。
もし今回の選挙で自民党が圧勝するようなことになれば、安倍首相は「国民の信任を得た」などと言い、「ワイルドな憲法審査」(萩生田光一・自民党幹事長代行)を強引に進めていくことは必至だろう。
ところが、問題なのはマスコミも世論も「憲法改正の議論を進める」と豪語する安倍首相の姿勢に対して、まるで危機感がないことだ。ワイドショーも、参院選そっちのけで「対韓国輸出規制」に快哉を叫んでいる。
そんななか、15日に放送された『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)では、あらためて憲法改正の問題点を検証する特集を組み、解説者として登場した安倍御用ジャーナリストの田崎史郎氏の解説に対して、玉川徹氏やゲストの憲法学者・木村草太氏、さらには司会の羽鳥慎一までがその詐術を暴く鋭いツッコミを連発した。
今回、『モーニングショー』が取り上げたのは、自民党の改憲4項目で「憲法9条への自衛隊明記」の陰に隠れてしまっている、「緊急事態対応」だった。
まず簡単におさらいすると、自民党は2012年に公表した憲法改正草案において「緊急事態条項の創設」を提案。その条文では、《我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態》時に緊急事態宣言が出されると《内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定すること》や《内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすること》を可能にし、その上、《何人も(中略)国その他公の機関の指示に従わなければならない》《基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない》などと規定。総理大臣に権限を集中させ、国会議員の任期延長を可能とし、与党は政令を出し放題、すべての人が否応なく国に従うことを余儀なくされ、法の下の平等や思想・信条・表現・言論の自由などといった権利を「制限」してしまう……というとんでもない内容だった。
このことから、「緊急事態条項」に危機感をもっている国民は多く、じつは『モーニングショー』でも「憲法9条への自衛隊明記」問題を取り上げたあと、視聴者から寄せられた意見で多かったのが「緊急事態条項を取り上げてほしい」という声だったという。
そして番組では、田崎史郎氏でさえ、こう述べたのだった。
「視聴者の方、極めて的確な考えをもっていらして、自民党は、もともとは緊急事態条項がいちばん大事だってことだったんですよ。それが、安倍首相が一昨年の5月に読売新聞のインタビューで『2020年に施行したいんだ。かつ自衛隊を明記したいんだ』ということを言われたんで、自衛隊明記のほうがグッと前に出てきているんですけども、僕から見ても本当に大事なのは、この緊急事態条項だと思います」
つまり、御用ジャーナリストも認めるように緊急事態条項は“改憲の本丸”であるわけだ。