明日、参院選が公示されるが、“安倍応援団”ジャーナリストといわれる櫻井よしこ氏が応援演説で事実を歪曲した野党攻撃を行い、批判の声が上がっている。
櫻井よしこ氏といえば、安倍首相の推し進める憲法改正運動の旗振り役であるだけでなく、自ら主宰するインターネット番組「言論テレビ」でも安倍首相をさかんに擁護し、最近でも月刊誌「Hanada」(飛鳥新社)8月号で「無責任野党と朝日新聞に問う 安倍総理、大いに語る」と題するロング対談をするなど“首相の広報官役”も果たしている。
ところが、その櫻井氏が6月25日、塚田一郎参院議員(参院選新潟選挙区予定候補)の集会に登場し、応援演説を行ったのだ。
塚田議員といえば、今年4月、山口県下関市と北九州市を結ぶ道路整備をめぐって、「安倍晋三総理大臣から麻生副総理の地元への、道路の事業が止まっている」「私はすごくものわかりがいい。すぐ忖度する」「今回の予算で国直轄の調査計画に引き上げた」と、忖度による安倍首相、麻生太郎財務相への利益誘導を公言。責任を取って国交副大臣を辞任したばかりだ。
一応、ジャーナリストを名乗っておきながら、そんな候補者の応援演説を引き受ける感覚には首を捻りたくなるが、もっと問題なのはその内容が、事実を歪曲していることだ。候補者に関して虚偽の事実を公にすることは、「虚偽事項公表罪(公職選挙法235条第2項)」違反に当たる可能性がある。
櫻井氏は塚田議員の対抗馬である野党統一候補で弁護士の打越さく良氏に対してこう批判した。
「(参院選の)新潟の場合は塚田さんと打越さんの一騎打ちです。この中で『自衛隊をなくして皇室をなくす』という打越さんがいいと思う人はいるはずがない。(参加者から『そうだ!』『負けてられないよ!』という声)。負けてられないけれどもお父さん、今ね、調査すると、打越さんのほうが少し有利なのですって。恥ずかしくない? (参加者から『恥ずかしい!』との声)だから、これを一日も早く逆転しないといけない。逆転して、そして、さらに彼女に打ち勝って、選挙の当日にはすごい票差でこっちが勝たないといけない。(大きな拍手)皆さん、打越さんに聞きましょう。『あなたは皇室のことをどうなさるおつもり?』『自衛隊を解散するのですか?』。聞いて下さい。だって共産党が一生懸命支援をしている」
しかし櫻井氏が放った「『自衛隊をなくして皇室をなくす』という打越さん」という発言は、フェイクの可能性が高い。というのも筆者は打越氏の集会を取材しているが、予定候補本人はもちろん応援演説をした共産党の国会議員からも、櫻井氏が言うような“自衛隊をなくす”や“皇室廃止”の訴えなど聞くことはなかったからだ。
また打越氏の出馬会見を報じた5月11日の産経新聞でも、打越氏の5本柱の政策が紹介されているが、「(1)格差と差別のない社会(2)地域経済の躍進(3)原発ゼロ(4)暮らしの安心・安全確保(5)新時代の平和政策」という政策であり、“自衛隊解散”も“皇室廃止”も入っていない。
念のため打越氏の選対関係者にも問い合わせたが、「打越氏が街頭演説で自衛隊解散や天皇制廃止を訴えたことはない」と否定しているし、さらに櫻井氏は演説のなかで、打越氏がいつどこで「自衛隊をなくして皇室をなくす」という発言をしたのかの根拠を示すことはなかった。