この株主からの質問に対して、早河会長が「質問をまとめてください!」と苛立ちを見せたのは前述したとおり。株主から「今のが質問ですよ」と返され、早河会長の指名で人事局担当の藤ノ木正哉・専務取締役が答えるのだが、これがまた回答にならないものだったという。テレ朝中堅社員が証言を継ぐ。
「藤ノ木専務は『個々の人事異動については回答を差し控えるが、組織の活性化と社員のスキルアップ、経験領域の拡大につながることを意図した人事異動として実施した』と。ようは一般論で対処したんだけど、経済部長まで務めた人間の総合ビジネス局への異動が“当人のスキルアップのため”なんていうのは、建前としてもありえない。前の経済部長は政治部長に栄転してますし、その前もネットニュース関連を統括するクロスメディアセンター長になってますからね。当然のように、質問者の株主は『全然答えていない』と批判。他の株主からも『答えろ!』『そんな話じゃないだろ!』と怒号が飛ぶなど、会場は騒然としました」
あげく、経営陣の煙を巻く回答に業を煮やした株主が、最後にテレ朝の若手局員たちへ向かって「M部長にかならずもう一度報道の現場に戻ってきてほしい。そう株主が申していたとお伝えください!」とマイクで直接呼びかけ、拍手が起きるなど、今年のテレ朝総会は異例の展開で幕を閉じたという。
いずれにしても、『報ステ』などでテレ朝のジャーナリズムを牽引してきたM氏を報道局から外すという異常な人事は、まさに「安倍政権を忖度した見せしめ」と言わざるを得ないが、それを株主総会で追及されてもなお「スキルアップ」「組織の活性化」などと平然と言い放つテレ朝経営陣の厚顔には呆れるほかない。
しかも、株主総会で顕現したテレ朝の“安倍政権忖度”はこれだけではかった。総会の質疑応答のなかで、テレビ朝日の放送番組審議会メンバーの資質を問う質問も株主から出されたのだが、とりわけ強く追及されたのが、放送番組審議会の委員長を務める見城徹・幻冬舎社長についてだ。