安倍首相は改憲による「自衛隊明記」にかんする説明では、「自衛隊員募集に6割以上の自治体が協力を拒否しているから」だの「自衛隊員の子どもが涙を浮かべながら『お父さんは違憲なの?』と言っているから」だのと述べてきたが、いずれもインチキ話であることが判明している(詳しくは既報参照→https://lite-ra.com/2019/05/post-4698.html)。そんなデタラメばかりだというのに、何を議論しろと言うのだろうか。
だいたい、年金や消費増税という国民の生活に大きくかかわる問題が目の前にあるというのに、なぜ憲法を争点にする必要があるのか。現に、『報道ステーション』(テレビ朝日)がおこなった直近の世論調査でも、「参院選で重視する政策は?」(複数回答可)という質問でもっとも多かったのは「年金・社会保障制度」の60%で、「憲法改正」はわずか16%だった。
つまり、年金や社会保障を争点すれば劣勢を強いられることがわかっているから、“悪夢のような民主党政権”という7年も前に終わった話を持ち出して国民にイメージを刷り込ませた上で、予算委員会を拒否しつづけたことを棚に上げて「憲法の議論をしない野党でいいのか」と憲法審査会の実施状況を選挙の争点にしようというのである。
これで、安倍首相がいかに「国民生活ガン無視」であるかがはっきりしたと言えるが、しかし、同時に参院選は非常に恐ろしい選挙になることを意味している。もしこれで安倍自民党が勝利し、衆参合わせて3分の2議席を確保してしまえば、必ずや、選挙後に安倍首相は胸を張って「選挙は憲法を争点にした」「憲法改正について国民に信任を得た」と宣言するのは間違いないからだ。
国民の暮らしに対する不安に向き合わず、憲法で争点ずらしを図って改正に持ち込む──。そんなダブルの悲劇を現実にしていいわけがない。野党には、選挙戦でも年金と消費増税の問題をぶつけ、ふさわしい争点は何なのかを徹底して国民に問いかけてほしい。
(編集部)
最終更新:2019.06.28 09:22