年金受給年齢の65歳以上の高齢者や、学生バイト、女性の非正規労働者が生活苦で働かざるを得ない経済状況に陥れながら、それを根拠に「保険料収入は増える!」と主張する──。まったく国民をコケにしているとしか思えないが、恥を知らない安倍首相は、言うに事欠いて、こうアジったのだ。
「私たちの年金を充実する唯一の道は、年金の原資を確かなものとすること。すなわち、経済を強くすることであります。いわんや、高齢者のみなさんにとって大切な年金について、具体的な対案もなきままに、ただ不安だけを煽るような無責任な議論は、決してあってはなりません」
「年金の原資をたしかなものにするには、経済を強くすること」って、政権を6年も担いながらデフレも脱却させられていない安倍首相がよくも言ったものだ。しかも、立憲民主党や共産党はしっかり年金問題の対案を党首討論で安倍首相に突きつけたというのに、またも「対案がない」と嘘を吐いて野党批判に話をすり替え、こう述べたのだ。
「12年前、夏の参院選で、自民党は歴史的な惨敗を喫した。国会ではねじれが生じ、混乱が続くなか、あの民主党政権が誕生しました。悔やんでも、悔やみ切れない。12年前の深い反省が、いまの私の政権運営の基盤になっています」
国会閉会にともなう総理会見という場を利用して、一方的にデタラメな話を並べ立てた上、“悪夢の民主党政権”と呪詛を唱える……。だが、問題はこのあとだ。
安倍首相は7月21日投開票となった参院選について、国民に向かって、こう明言したからだ。
「令和の日本がどのような国を目指すのか。その理想を語るものは憲法です。しかし、残念ながら、この1年、国会の憲法審査会は衆議院で2時間余り、参議院ではたった3分しか開かれていない。議論すらおこなわれないという姿勢で本当によいのかどうか。そのことを私は国民のみなさまに問いたいと思います」
「しっかりと、この参議院選挙においては、憲法の議論すらしない政党を選ぶのか、国民のみなさまにしっかりと自分たちの考えを示し、議論を進めていく。その政党や候補者を選ぶのか。それを決めていただく選挙であると思います」
ようするに、安倍首相は「憲法の議論をする政党か否か」選挙の争点だと言い切ったのである。