首相官邸ホームページより
やっぱり、この男は年金なんてどうなったっていいと思っているのだろう。昨日19日、約1年振りとなる党首討論がおこなわれたが、安倍首相は野党党首の金融庁報告書をめぐる追及や年金制度の改革提案に対して、何ひとつまともな答弁をせず、ひたすらごまかし続けた。
たとえば、立憲民主党の枝野幸男代表が報告書問題の本質は国民の年金制度に対する不安であり、政府はその不安にきちんと向き合って根本的な解決策を講じるべきだという質問をしたのだが、安倍首相の答弁はこんな調子だった。
「先般の金融庁のワーキンググループの報告の問題点は何か、ということでありまして、枝野議員もすでに指摘をされましたように、平均値で見るのがいいのか、ということでございまして、ここに大きな問題があったわけでありまして、この報告書によるとですね、月々、年金生活者の方々が5万円不足する、いわば、5万円赤字であって、そしてそれは95(歳)まで生きれば、2000万円になるということからですね、大きな誤解が生じたわけでございますが、これには前提条件があり、前提条件としては、2500万円平均で預金があると。その預金のなかから5万円ずつを活用して生活をしていくということでありますが、平均値でございますので、2500万円預金があるということに、『そんなにないよ』と違和感を感じる方々もたくさんおられるのではないか、ということでありまして。大切なことは何か、と言えば、年金生活者の生活実態は多様でありまして……(延々続く)」
何を話しているのか、意味がわかる人がいたら教えてほしい。いや、安倍首相自身も自分が何を言っているかわかってなかったはずだ。明らかに、わざと論点をずらし、意味のない説明を延々話し続けて、時間稼ぎをしていたのだ。党首討論は全体で45分しかないため、これを繰り返してやり過ごす作戦だったのだろう。
実際、他の質問に対しても同様だった。枝野代表は続いて低所得者の負担に配慮する「総合合算制度」の導入を政府に提案したのだが、安倍首相はそれには一切答えず、「まず、高齢期において、生活を支えるものは、もちろん年金が大きな柱でございますが、基礎年金と厚生年金、あるいは企業年金等があります」といまさらすぎる年金制度の説明や、例の「正社員がこの6年間で150万人増えた」などという自慢話を延々しゃべり続けた。
また、国民民主党・玉木雄一郎代表から「新しい財政検証をなぜ出さないのか」と追及を受けると、「まぁちょっと短くしますが、これは大切なことなんで」などと言いながら、今度は、マクロ経済スライドと財政検証について説明をはじめた。
「まさにマクロ経済スライドというのはですね、将来の、これは平均寿命の延伸、あるいはこれ被保険者の増減等を入れてですね、これ、あの、物価の上昇、あるいは賃金の上昇にはついていけないけれども、これはあの、マイナスに残念ながらなっていくわけでありますが〜」
「財政再検証につきましては、これ、5年に1度、おこないます。5年に1度、おこなう。で、この5年に1度おこなう、え〜、財政の再検証についてはですね、これは平均寿命とか出生率、そして支え手の増減も〜」
いまさら何を用語説明してるのか、と言いたくなるが、なんとこれが2分以上続く。そして、ようやく今回、財政検証を発表しない問題について触れたと思ったら、「政治の状況等かかわらずですね、しっかりと専門家が出てきて、数値計算をしていく上での大切な検証でございますから、それを政治とはかかわらずですね、政治とはかかわらず、政局とはかかわらず、しっかりとですね、これは検証をしていただき、報告をしてもらいたい、このように考えております」と、なんの答えにもなっていない官僚答弁を繰り返すだけ。今回の財政検証では、賃金低下で年金削減が避けられないことから、発表を参院選後に先延ばしにしているのは明らかなのに、完全にゴマカしてしまったのだ。