佐藤浩市インタビューが掲載された「ビックコミック」
映画『空母いぶき』で首相役を演じた佐藤浩市に対して、安倍応援団が「安倍首相を揶揄した」などと言いがかりをつけて大炎上させた一件。しかし、ネットにもまだ、良識が残っていたようだ。当初こそ、ネトウヨに追従するスポーツ紙が安倍応援団に乗っかって佐藤批判を煽るなど、佐藤攻撃が大勢を占めていたが、ここにきて、真相が明らかになり、「安倍様の悪口は許さない」と総攻撃を仕掛けた百田尚樹ら安倍応援団に批判が殺到。逆に、連中が恥を晒す展開になっているのだ。
まずはもう一度、騒動の経緯を振り返っておこう。きっかけは、産経新聞の政権御用記者・阿比留瑠比がFacebookで、「ビッグコミック」(小学館)の『空母いぶき』特集に登場した佐藤の発言を取り上げたことだった。「最初は絶対やりたくないと思いました(笑)。いわゆる体制側の立場を演じることに対する抵抗感が、まだ僕らの世代の役者には残ってるんですね」「彼(首相)はストレスに弱くて、すぐにお腹を下してしまうっていう設定にしてもらったんです。だからトイレのシーンでは個室から出てきます」という発言を引用し、批判。百田尚樹や幻冬舎の見城徹社長、高須クリニックの高須克哉院長らもこれに続々と参戦し、百田にいたっては佐藤に対して「三流役者が、えらそうに!!」と吠え、「もし今後、私の小説が映画化されることがあれば、佐藤浩市だけはNGを出させてもらう」などと宣言した。
そもそも、一国の首相だからこそ、揶揄をしたとしても何の問題もないし、「体制側の立場を演じることに対する抵抗感がある」というのも極めてまっとうな感覚だ。むしろ狂ってるのは、権力者にこびへつらうことを恥ずかしいと思わない安倍応援団のほうだろう。
しかも、本サイトが指摘したように(https://lite-ra.com/2019/05/post-4711.html)、佐藤は安倍首相のことを揶揄なんてしていなかった。実際に掲載されたインタビューを読むと、佐藤はたんに役者としての姿勢や役づくりについて語っているだけ。「体制側の立場を演じることに対する抵抗感が、まだ僕らの世代の役者には残ってるんですね」という発言も、「彼(首相)はストレスに弱くて、すぐにお腹を下してしまうっていう設定にしてもらったんです」という発言もまったく別の質問に対する回答で、文脈もまったく違う。
佐藤は「ストレスに弱くて、すぐにお腹を下す設定にしてもらった」と話すまえ、「少し優柔不断な、どこかクジ運の悪さみたいなものを感じながらも最終的にはこの国の形を考える総理、自分にとっても国にとっても民にとっても、何が正解かなのかを彼の中で導き出せるような総理にしたいと思ったんです」とも語っていた。つまり、他国の武装集団に上陸され、自衛隊を武力出動させるかどうかという戦後初の重大な選択を迫られる総理大臣の責任の大きさや逡巡を表現しようとして考え出された設定であり役づくりだったのだ。
ところが、安倍応援団はそれを切り貼りして、あたかも佐藤が「安倍首相が気に入らないから、お腹を下す設定にした」かのように攻撃した。ようするに、安倍応援団はいまや“反安倍”を吊し上げる特高警察と化し、「安倍首相のマイナスになる発言は1ミリも許さない!」と、言論封殺のためにでっちあげ恫喝までするようになったのだ。“