しかも、経産省は安倍政権下で以前とは比べ物にならないくらい力をもつようになった省庁だ。側近中の側近である今井尚哉首相秘書官の出身官庁で、さまざまな政策で経産省の意向が最優先され、いまや「経産省が安倍政権をコントロールしている」とまでいわれるようになった。
こうした空気を察知したテレビ局が、官邸や自民党だけでなく、その息がかかった経産省に対しても、得意の忖度を発揮して批判を自主規制するようになった。そういう傾向は確実にあるだろう。
「マスコミにはもともと批判できる省庁と、タブーになっている省庁がある。
報復の武器や情報を持っている省庁には弱いんです。以前は、警察、検察、財務省が三大タブーといわれていたが、安倍政権下ではそこに、経産省が加わった感じです」(民放関係者)
この経産省キャリア官僚の覚醒剤事件はおそらくこのまま尻すぼみになる可能性が高いだろう。経産省内で覚醒剤を使用した問題や、使用を知っていたり事件に関係していた他の職員がいたのではないかという疑惑についても、テレビがふれることはなく、そのうち疑惑そのものがなかったことになるだろう。
「上級国民」という陰謀論めいたスラングを好んで使うつもりはなかったが、この状況を見ていると、安倍政権の息がかかっているかどうかで国民が「上級」と「下級」に選別され、法律の適用までが差別化される社会が、現実になってしまうのでないか、そんな恐怖が頭をもたけてくるのだ。
(編集部)
最終更新:2019.05.12 09:34